傍にいる〜久遠のキズナ〜
□第壱話
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――ザアァァァ…。
『…ごめん…ごめん、なさい…』
激しい雨のなかに、その呟きは消えていった。
表に薬鴆堂という看板が掲げられているやや大きめな屋敷。その屋敷の縁側に立ち、外を眺めている少女が一人いた。
「……つき…、あ…つき」
奥から聞こえる声に少女はしかし振り向かない。すると、彼女の背後から腕が伸びてきた。
「ここにいたのか、緋月。どうしたんだ、縁側に出てきて?まだ寝てないとだめだろう。体に障る」
そっと華奢な身体を包んだのは屋敷の主である鴆だ。
『…少し、外を見たくなったの。…ごめんなさい』
小さめに話しながら、彼女は咳を繰り返す。鴆は横に移動し、優しく背をさする。
ようやく落ち着いた頃には疲れてしまったのか鴆にもたれかかっていた。あまりに細すぎる体は少し前まで、赤子がいたのかを疑いたくなるほどで…。
「…中に戻るからな?抱えるぞ、緋月」
微かに頷いたのを見て、鴆は膝裏に手を通し、抱え上げた。そして、そのまま部屋へと戻っていった。