掛け合い企画

□二度目のザナドゥにて
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ヨシュア
「あ、アドルさん。勝負勝ったんですよね、おめでとうございます」

アドル
「ありがとう。所で、この状況は一体…」

近付いてみると、遠目で見た時よりずっと暗くどす黒い空気が漂っていて、少しうろたえてしまう。

ヨシュア
「聞いて下さいよ…あの2人が」

ガッシュ
「言うなヨシュア!」

ヨシュア
「アドルさんの着地を見たティータの言葉で」

アガット
「やめろヨシュア!」

ヨシュア
「なんですか」

ヨシュアはちょっと黙れとでも言わんばかりの冷たい視線を正座の2人に向けた。

アガット
「アドルには言うな…絶対こいつは俺らに優しく諭すだろ…!」

ヨシュア
「諭してもらえば良いでしょ」

ガッシュ
「それが傷を更に抉るんだよ!」

ヨシュア
「知ってますよ、だから諭してもらえば良いでしょ」

アドル
「えっと…僕が誰に何について諭すんだい?」

ヨシュアはアドルを見てからまた2人に視線をやった。

アガット
「……」

アガットは視線を逸らした。

ガッシュ
「……」

ガッシュは俯いた。

ヨシュア
「…」

ヨシュアはなんとも形容し難い表情と目でアドルに助けを求めた。

アドル
「僕はどっちの味方をすれば…」

ガッシュ
「何も聞くな…この話は終わ、うっ…!」

無理やり話を終わらせ立ち上がろうとしたガッシュは急にへたり込んだ。
 
その光景を見ていた和やかな女子組は、何が起きたのかすぐに理解した。

エステル
「あれってさ、確実にさ…」

アイシャ
「足が痺れてるわね」

ティータ
「正座に慣れてないのかなぁ?」

オリビエ
「あの調子だとアガットくんも痺れてそうだよねぇ」

何気なく会話に入ったオリビエに誰も驚かない。

エステル
「オリビエもそう思う?」

オリビエ
「だって、さっきガッシュくんが崩れ落ちた時アガットくんたらお前もかよって顔をしていたよ」

ティータ
「ふふっ、似た者同士だね」

アイシャ
「性格、雰囲気、ロリコン気質に加えて正座が苦手な所まで似てたのね」

女子組+オリビエは、生暖かい目で男子組を見守る事にした。


アドル
「どっどうしたんだガッシュ!?まさか怪我を隠してたとか…!」

ガッシュ
「なんでもない…!(足が痺れて動けないとか言えない…)」

アガット
「(本気で心配してる相手に足が痺れたとか申し訳無くて言えねぇよな…俺もだが)」

本気でオロオロし始めたアドルに内心冷や汗ダラダラなガッシュに、アガットは哀れみの視線を向けた。

ヨシュア
「今日の所はこの辺にしておきます、どうぞ散って下さい」

ヨシュアはわかっているらしく語尾に笑いが含まれている。

アガット
「ヨシュアお前…わかって言ってるだろ」
 
ヨシュア
「何がです?アドルさん、アガットさんも動けないみたいですよ」

アドル
「それは本当かい!?」

アガット
「(ヨシュアてめええぇ…!)」

アドルはアガットの方に歩いてきた。
アガットはヨシュアを睨み付けたがケロリとしている。

アイシャ
「ヨシュアって実は鬼なの?」

エステル
「いつもは優しいけど…今回はあの2人が悪いわね」

オリビエ
「アドルくんは真面目だよねぇ、怪我の心配するなんてさ」

ティータ
「危ない事はしちゃダメだね!」

ティータの少しズレた言葉に更に和んだ。


アドル
「…怪我はどこだい?」

ガッシュ
「いや本当になんでもないんだよ!ちょっと足が…」

アドル
「足?足なのかい!?」

アガット
「大丈夫だっつの!じっとしてれば治るもんだよ!」

ヨシュア
「(痺れた足って軽くつつかれるだけでもきついからね…大事になるのは避けたいんだろうな)」

ヨシュアはアドルと正座組の攻防をしばらく笑いを堪えながら見ていた。


エステル
「あの痺れた時の微妙な感覚は何度も味わいたくないよねー」

アイシャ
「でもそうもいかないのよね」

ティータ
「もう許してあげて欲しいな…」

オリビエ
「では、そろそろ助け舟を出してこよう!」


オリビエは意気揚々と男子組の方に向かい、女子組は手を振り見送った。

アドル
「どうも心配だから足を見せてくれないかな」

アガット
「いや本当にあとちょっとで動くようになるから!なぁガッシュ!」

ガッシュ
「おっおう!そ、そんな泣きそうな顔をする程の事じゃないんだよ、本当だ!」

アドル
「…本当かい?」

オリビエ
「本当だよアドルくん!」

アドル
「オリビエさん」

泣きそうな顔で無意識に手をわきわきさせるアドルの肩に、オリビエは軽く手を置いて言った。

オリビエ
「本人達の言葉を信じようじゃないか。あと君の唇の砂漠具合が本当に酷いよ」

アドル
「あ…そうか、ごめんね2人共。怪我かもしれないって思ったら居ても立ってもいられなくなって」

ガッシュ
「わかってもらえりゃ良いんだよ…」

アガット
「ああ…そうだな」

少し申し訳ない気持ちと精神的な疲れからか、2人の髪の毛先がしょんぼりしているように見えた。


アイシャ
「アドルのお人よしが炸裂してるわね」

エステル
「ようやく砂漠をどうにかする所まで来たのね」

ティータ
「道のり長かったねー」


オリビエは再び懐からリップスティックをスマートに取り出し、差し出した。

ヨシュア
「ひび割れてますよ…大丈夫ですか」

アドル
「あはは…ちょっと時間経ちすぎたかな」
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