掛け合い企画

□二度目のザナドゥにて
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アドル
「(困ったな、道具屋なんて近くに無いしモナの店で見た事無いし…)」

オリビエ
「足速いなアドルきゅん!」

アドル
「アドルきゅん!?」

逃げながら考えるが答えは出て来ない。
オリビエから突然きゅん呼びされたアドルは驚いて声が裏返ってしまった。

アガット
「あー…アレは本気で楽しんでるな」

ティータ
「何を楽しんでるの?」

アガット
「追いかけっこだ」

エステル
「いい大人が何やってんだか…」

ガッシュ
「逃げるから追いかけられるんだよ」

ヨシュア
「でも逃げたくなる気持ちはよく分かる…きゅん呼びされたら鳥肌が…!」

アイシャ
「ヨシュアも呼ばれてたものね」

その場に居た全員が遠い目をしていた。


オリビエ
「さっきから唇ガッサガサじゃないか!」

アドル
「あなたが僕に塗ろうとするから逃げてるんですよ!」

オリビエ
「つけた事が無いみたいだからやってあげようって話だよ!」

アドル
「それくらい自分で出来ますよ!」

オリビエ
「それじゃ僕がつまらないじゃないか!」

アドル
「僕は貸してもらえるだけで十分です!」

ダッシュでの追いかけっこは迫力がある。しかし理由が理由なだけに凄くシュールである。切羽詰まっているからかいつの間にかアドルが敬語になっている事に誰も気付かない。
 
ティータ
「オリビエさんが折れれば解決するのになぁ」

エステル
「本当にその通りね」

ガッシュ
「あれだけ走ってて息を乱さない辺りさすがだな、一戦交えてみたいもんだ」

アガット
「今はそこじゃねぇよ…」

ヨシュア
「もうそろそろ決着着いても良い頃だけどなぁ」

ヨシュアがボソリと呟いた頃、追いかけっこは終わりを迎えようとしていた。



オリビエ
「ゼェ…ゼェ…僕より重装備なのになんでそんなに身軽なんだい!?君の先祖は猿か!」

アドル
「えっと、なんか勢いで」

アドルは地上では埒が明かないと、目の前にそびえ立つ木に飛び移っていた。

オリビエ
「はぁ…もう疲れた、僕の負けだよ。凄いね君は…」

アドル
「よし!」

オリビエの降参ポーズを見たアドルはガッツポーズをした。


ガッシュ
「アドルが勝ったか」

アガット
「オリビエじゃなくて良かったと思ってるのは俺だけか?」

エステル
「安心して、私も思ってるわ」

アイシャ
「私も同じく」

ヨシュア
「ここに居る誰もが同じ気持ちだと思うよ」

ティータ
「えっと、とりあえず良かったね?」


ティータ以外はまだ遠い目をしていた。



オリビエ
「さて、まずは降りてくれないかな?さすがにこの距離では肩が外れてしまうよ」

アドル
「はは、そうだね」

アドルは木から飛び降り軽々と着地した。
 

ティータ
「アドルさんって凄い…あんな高い所からスタッて!格好良いなぁ!」

ティータはアドルに尊敬の眼差しを送っている。それを見てギョッとした人物が2人、慌てて口を開いた。

アガット
「お、俺だってあれくらい出来るぞティータ!」

ガッシュ
「お、俺だってあれくらい軽く…!」

ヨシュア
「2人共落ち着いて下さい!危ないからやろうとしないで!ちょ、登らないで!!」

アイシャ
「馬鹿ねあの2人…エステルはどう思う?」

エステル
「馬鹿よね。ストッパーが居てくれて良かったわ!」


アガットとガッシュは正座させられ、ヨシュアから説教を受けた。


ティータ
「アイシャお姉ちゃん、エステルお姉ちゃん」

エステル
「どうしたの?」

アイシャ
「何かしら?」

ティータ
「どうしてアガットさんとガッシュさんはヨシュアお兄ちゃんに怒られてるの?」

エステル
「それはねティータ…」

アイシャ
「あなたがモテモテって事よ」

ティータ
「?う〜ん…?」

よくわかっていない様子のティータを見て、エステルとアイシャは生温い笑顔でこう言った。

エステル
「ティータはそのままで居てね」

アイシャ
「そうね、そのままで居て欲しいわね」

ティータ
「う、うん?」

まだよくわかっていないが2人に頭を撫でられ笑顔を見せた。その笑顔に癒されまた笑顔が生まれた。
 


オリビエ
「いや〜まだ若いのに大したもんだよ!」

アドル
「そう言うオリビエさんだって若いじゃないか」

談笑しながら歩いて戻ってきた2人は、和やかな雰囲気の女子組と、どんよりとした雰囲気の男子組の極端過ぎる差に首を傾げた。

オリビエ
「僕達が走ってる間に何があったんだい?」

アドル
「オリビエさん、リップクリームは後で借りるよ」

オリビエ
「君は自分の砂漠より他人を選ぶのかい…こりゃたまげたね!」


男子組の方に向かうアドルを見送り、オリビエは額をぺちんと軽く叩いた。
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