掛け合い企画

□二度目のザナドゥにて
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エステル
「あれ?ヨシュアとオリビエは?」

アイシャ
「すぐ戻るわよ…多分だけど」

エステル
「?」

少し遠くから爆発音と断末魔が聞こえるが、全員無視である。

アイシャ
「さて、話を戻すわよ。ティータもエステルもダメになったのよね?」

アドル
「そうだね」

アイシャ
「コホン、だ、だったら私のを使わせてあげても良いのよ!」

少しどもりながらアイシャは小物入れからリップクリームを取り出し、アドルの顔目掛けて突き付けた。

ガッシュ
「お姫さんもまずいと思うぜ?」

アイシャ
「なんで?私には別に許婚とか彼氏が居る訳でも…」

ガッシュ
「公宮の奴ら、特にあの女騎士がうるさいだろうよ」

アイシャ
「シグルーンはここに居ないんだから言わなきゃ良いじゃない」

ガッシュ
「アンタはうっかり口が滑るタイプだと思うがね」

アイシャ
「うっ…!」

エステル
「言い負かされちゃったね、どんまいアイシャ!」

アイシャ
「励まされても微妙な気分だわ…」

こうして誰が貸すか言い合っている間にも唇の砂漠化は進んでいる。動かすと少し痛いのでアドルは口を閉ざした。

エリカ
「あら、まだ決まってなかったの?」

喧嘩が終わったらしいエリカがアガットらしきボロ雑巾と化した人を引きずりながらやってきた。
 
ダン
「エリカさんおかえり。女の子は全滅したんだよ」

エリカ
「そうだったの…そんな気はしてたけど」

ダンの言葉にやれやれと肩を竦めると同時にアガットから手を離した。


ティータ
「アガットさん大丈夫!?アガットさん!」

アガット
「ティ…、ティー、タァ…!」

所々焦げているアガットにティータは一生懸命声をかけるが、なかなか起き上がれない。

ダン
「あれはさすがにやり過ぎじゃないのかな…」

エリカ
「まだやり足りないぐらいよ!」

ダン
「全く…相変わらず彼には容赦無いなぁ」

そうは言いつつアガットを助けない辺りなかなか鬼だなと、その光景を見た者は皆同じ気持ちになった。

エステル
「ティータ、これで復活させてあげて?」

完全に気絶しているのを見て可哀相になったので、エステルは持っていた回復薬を差し出した。

ティータ
「エステルお姉ちゃん…ありがとう!」

エステル
「いいえー!」

その様は姉妹のようだった。


アガット
「うっ…いってぇ…」

ティータ
「アガットさん…良かったぁ…」

エリカ
「チッ、目を覚ましたか」

ダン
「まあまあエリカさん」

どうどうとダンはエリカを落ち着かせる。
復活した喜びを笑顔で現したティータにアガットはときめいてしまい、岩に頭を打ち付けたくなった。
 
ガッシュ
「かっ可憐だ…!いやいや落ち着け俺!落ち着けぇ!!」

同じくティータの笑顔にときめいてしまったガッシュは、近くの木に頭を打ち付けていた。

アイシャ
「似てるわねこの2人…」

アイシャは冷ややかな目でアガットとガッシュを交互に見た。


オリビエ
「あれれぇ?まだアドルくんの件は解決していないのかな?」

いつの間にか戻って来ていたオリビエはアドルに近寄る。なんとなくアドルは後退した。

エステル
「ヨシュアおかえり!」

ヨシュア
「ただいまエステル」

エステル
「オリビエと何話してたの?」

ヨシュア
「ただの世間話だよ」

嘘つけ、と思っても誰も口には出さなかった。ヨシュアの笑顔が怖いからだ。

オリビエ
「女性陣がみんなダメで、しかも男性陣は誰も持ってなかったのかい!なんて事だ!」

アイシャ
「そんなオーバーリアクションしなくても…」

オリビエ
「仕方ない、僕のを使いたまえ!」

ヨシュア
「オリビエさんは持ってるんですか?」

オリビエはにんまり笑うと懐からリップスティックとリップブラシを取り出した。

オリビエ
「モテる男はいついかなる時も、身嗜みには気を使わないとね」

エステル
「そんな本格的なの持っててなんで最初から出さないのよ…」

オリビエ
「面白かったからさ!」

エステル
「あんですってぇ…!?」

エステルは驚愕した。
 
アイシャ
「リップブラシまで持ち歩く男性って初めて見たわ」

ガッシュ
「俺らみたいに危険と隣り合わせだと身嗜みとか言ってられないはずなんだがな」

アガット
「あいつはいつも妙に余裕があんだよ」

先程まで頭を打ち付けていたガッシュが落ち着いたのか会話に入ってきた。
先程まで頭を打ち付けたいぐらいに悶えていたアガットも落ち着いたらしい。
アイシャは深く聞かない事にした。


オリビエ
「さあアドルくん、後退するのをやめたまえ」

アドル
「いや、なんか無意識に体が動いちゃって」

オリビエ
「この僕がつけてあげるって言ってるんだから大人しくしたまえよ!」

アドル
「いや、遠慮しとくよ」

アドルは爽やかにしかしきっぱりと断った。

アガット
「あれは止めるべきなのか?」

ヨシュア
「多分止めに入ったらとばっちり食らいますよ」

ガッシュ
「…それは勘弁だな」

エステル
「オリビエの動きがいつもより変態臭いからアドルさんは無意識に距離をとっているのよきっと」

アイシャ
「つまりいつも変態臭いの!?身分高そうだけど」

ヨシュア
「そうだね、身分の高い変態だよ」

オリビエ
「ヨシュアきゅん酷いね君!」

会話を聞いていたオリビエは嘆いた。
ちょっと嬉しそうなのは見なかった事にする。
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