掛け合い企画

□死神くんと私本編
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軽々と跳ねられた亜咲は、救急車によって大きな病院に運ばれた。

亜咲
「えっと、アレ…?今どうなって…」

自分の下には傷だらけの自分が白いベッドに横たわっている。しばらく経って覚醒した亜咲は、意味が分からなかった。

ナイン
「お前、轢き逃げされたんだよ」

いきなり現れて驚いたが、それより不思議な事がある。
意識が無くなる前は見上げていたナインが、今は殆ど同じ目線に居るのだ。

亜咲
「轢き逃げって…私、死んだの…?」

ナイン
「…いや、昏睡状態。俺と同じ目線になっているのは魂が離れかけているからだ」

亜咲
「離れかけているって事は…死にかけ、なんだね?」

ナイン
「理解が早いな。そういう事…予定より随分早かったけど」
※「予定より〜」は呟くように

亜咲
「予定?…早いって何が、早いの…?」

不安を隠せない亜咲を横目に少しばかりの沈黙。その後ナインは口を開いた。



ナイン
「お前が轢き逃げされる予定の時間」

亜咲
「え、わた、私がっ轢き逃げされる時間…!?」

ナイン
「まあ、動揺するのも無理無いか…轢き逃げされるのは既に決まっていたんだぜ」

亜咲
「そう、だったんだ…」
 
ナイン
「俺は既にお前が轢き逃げされる事を知っていたのに止めなかった…何故だか分かるか?」

亜咲は伏せていた目を開けナインを見て、分からないと首を横に振る。

亜咲
「……助けるまでも無いくらいの関係だからじゃないの…?」

ナイン
「それもあるけどな」

ナインの曖昧な返事に沈んだ表情を疑問に染める。

ナイン
「俺…何故か見ず知らずのお前を助けたいと思ったんだ」

亜咲
「え?それはどういう…」

ナイン
「分からねぇ。お前が轢かれる時にそう思って、激しい頭痛に襲われて…結局は死んだ」

何の偶然なのか、亜咲の事になると頭痛に襲われる。何故かは本人にも分からないので説明しようがない。

亜咲
「うん…ナインさんにも分からないんじゃどうしようもないね。でも…」

ナイン
「でも…なんだよ」

亜咲
「あのね、助けたいって…死なないで欲しいって思ってくれた事が凄く嬉しかったの!」

亜咲の精一杯の泣きそうな笑顔に、ナインは言葉を失って俯いた。

ナイン
「…っ…(俺…コイツを死なせたくない。何故か分からないけど…亜咲の笑顔が崩れるのはツラい)」

亜咲
「あの、ナインさん…?」

ナイン
「…選択肢をやる」
 
亜咲
「せん、たくし…?」

顔を上げたナインの表情は何かの決意を固めたように感じさせた。

ナイン
「お前が予定より早く死んだ原因は俺にもあるからな。その、腕時計…」

亜咲
「あ…轢かれたのに壊れてない!」

ナインが指差した先には傷だらけで横たわる亜咲の腕。腕時計は傷ひとつ付いていなかった。

ナイン
「そいつは俺の力の一部だ。俺に何か無ければ絶対に壊れない…まあ、それよりだ。お前に腕時計をやったせいでお前の運命が狂った…だから償いをしたい」

亜咲
「つぐ、ない…って、どうする気なの?」
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