掛け合い企画

□死神くんと私本編
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夜は更け現在時刻は8時…

亜咲
「やっばい!学校遅刻する…行ってきまーす!」

勢いよく自宅を飛び出したのは黒髪を高い位置で結んだ少女、一 亜咲だ。

ナイン
「…追跡開始っと」

書類に載っている少女を発見し、結局睡眠時間が短かったナインは上空から追跡を開始した。

亜咲
「…ん?今ここ誰も居ないよね?」

ナイン
「げっ!気付かれかけてる!?」
※小声で

人間には見えない筈…とナインは苦悩するが、ふと長の言葉を思い出した。




「死期が近い人間には私達の姿が見えるから、空を飛んでる所とか大鎌とか狩り現場とか見られたら大変だねぇ。言い訳どうしよう、あはっ」
※「あはっ」は若干きゃぴっとして下さい



ナイン
「…あはっ、じゃねぇよクソ上司様!重要な事を何気ない会話に織り交ぜるなと何度も言ってんだ…」
※言いかける

思いの外大きな声で堂々と悪態を吐いていたらしい…亜咲はしっかりとナインを見付けていた。

亜咲
「え…あれ?人が空飛んでる?」

ナイン
「馬鹿…早速バレてんじゃねぇか!何から何までクソ上司様のせいだ!」

バレても尚、ナインは仮にも一番の実力者である長への悪口を止めなかった。
 
亜咲
「あ、やっぱり人なんだ。どうやって飛んでるのかな…機械とか何も無いし…」

亜咲が1人「どうやって飛んでいるのか」と妄想を繰り広げている中、ナインはこの場をどうするか頭を悩ませた。

ナイン
「(ダイレクトに死神だなんて言えないし…いやいっそ潔く言うか?いやでもやっぱりそれは…)」

亜咲
「もしかして幽霊!?」

ナイン
「っ!?」

妄想を終え結論付いたのか、亜咲は突然叫んだ。ナインは空に居るのにも関わらずその声量に驚き考える事を中断した。

亜咲
「えっ、まさかの当たり?」

ナイン
「…まあ、そんなもんだ」

幽霊と思われていた方が動きやすいと判断し、ナインは曖昧に答えた。

亜咲
「そうなんだ…私霊感なんてあったかなぁ」

ナイン
「霊感なんてものは突然目覚めるもんだ。
第六感覚醒おめでとさん」

亜咲
「あんまり嬉しくないけど…最初に見たのが君だったから別に良いや」

亜咲はテキトーにぶっきらぼうなお祝いを口にしたナインに微笑みかけた。

ナイン
「なんだよそれ…」

亜咲
「幽霊ってもっとドロドロしてておぞましいものだと思ってたけど…君は綺麗でおぞましさなんて微塵も無いんだもの」
 
ナイン
「男が綺麗なんて言われて喜ぶ訳無いだろ」

亜咲
「雰囲気が綺麗なの。確かに見た目も美形だけど」

ナイン
「……オレを褒め千切ったって何も出ないぞ、出してやらないかんな!」

そう言うとナインは腕時計を何も無い空間から作り出し、亜咲に投げつけた。

亜咲
「言ってる事とやってる事…逆だよね?」

ナイン
「うるせーな!なんか急いでるっぽいから腕時計作ってやったんだよ!悪いか!」

亜咲
「ううん…ありがとう。凄く可愛い!」

ナイン
「そーかよ…良かったな」

亜咲は腕時計を見ながら歩き出した。
ナインもそれに付いて行く。

亜咲
「思ったんだけど…幽霊って物作れるんだね。知らなかった!」

ナイン
「…っ!そ、それはオレだから出来るんだよ」

亜咲
「へえ、君だから出来るんだ。能力持ってるのって凄いよ!」

ナイン
「へーへー…ありがとよ。…お前、急いでたんじゃないのか?」

亜咲
「やっば!それじゃ、さようなら幽霊さん、時計ありがとう!」

亜咲は時計を見ながら走って行った。
恐らく学校へ行くのだろう。

ナイン
「…あの時計、探知機内蔵なんだよな」

ナインの呟きは誰にも聞こえない。
 

亜咲は小走りのまま十字路に通りかかる。
信号は青だった。

亜咲
「青信号だ、ラッキー!」

横断歩道をさっさと渡ろうと速度を上げる。この機を逃せば確実に遅刻だろう…

ナイン
「お、居た居た。アイツ急いでるなぁ…なんか悪い事したかもしんねぇな」

ナインは探知機の反応を頼りに亜咲に付いていく。自分の失態に罪悪感を感じざるを得なかった。


亜咲
「ふっふーん。あと少、し…嘘!?今青信号…!」

1台の車が信号を無視し遠くから爆走して来ていた。車が停止する事を前提に軽く走っていた亜咲に容赦無く向かっていく。

ナイン
「!!…亜咲っ!」

ちょっとした罪悪感で目を逸らしていた間の出来事で、瞬時に対応出来なかった。

亜咲
「あ、あぁ…(やだ、足が動かない…!)」

ナイン
「アイツ…!ぐっ…ぁ…(こんな時にまた頭痛かよ!亜咲が…動けよ体!)」


恐怖で足が竦んでしまった亜咲と、前より激しい頭痛に襲われるナインには全てがスローモーションに見えた。
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