掛け合い企画

□二度目のザナドゥにて
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二度目のザナドゥを順調に旅する一行は、仲良く円になって食事をしていた。


ティータ
「はい、エステルお姉ちゃん!」

エステル
「ありがとー!やっぱりティータの料理はおかわりせずにはいられないね!」

ティータ
「えへへ、良かった」


そこはとても和やかな空間だった。

ダン
「いやあ、アドルさんの話は面白いものばかりですね」

アドル
「そんな、ダンさんの話だって興味深いものばかりですよ」

ダン
「そうかな、ははは」
アドル
「そうですよ、あはは」


アイシャ
「…本当にそっくりね」

ガッシュ
「声だけは異常にな」

アイシャとガッシュの呟きは話に花を咲かせる2人には届かない。


エリカ
「あんたにおかわりなんてありませんー!」

アガット
「なんでだよ!」

エリカとアガットはティータの料理のおかわりを懸けて火花を散らしている。


オリビエ
「温泉に入ってから音色がおかしいんだ…」

ヨシュア
「お風呂に楽器持ち込んだら痛みますよって言いましたけど」


ヨシュアとオリビエとの間には結構距離がある。現在の心の距離なのかもしれない。
一度仲間として戦ったからか、世界が違う人間の集まりという感じがしない程打ち解けていた。

アドル
「それで遺跡島に行ったら何故かガッシュが、痛っ…」
 
談笑中のアドルの言葉は突然途切れ、少し顔をしかめ口元に指を軽く這わせた。

ダン
「どうしたんだい?」

アドル
「いやぁ…唇が切れたみたいで。地味に痛いですねこれ」

苦笑混じりにそう言うと、話を聞いていたアイシャが口を開いた。

アイシャ
「アドルはリップ持ってないの?」

アドル
「持ってないよ」

アイシャ
「ええ!?乾燥するじゃない!」

アドル
「舐めときゃ良いかな、なんて」

アイシャ
「舐めたら余計乾燥するわよ」

アドル
「そうなのかい?」

冒険に一直線なアドルはきっと生きていく為の物しか持ち歩いていないんだなとアイシャは頭を抱えた。

ガッシュ
「男がリップクリーム持ち歩くなんてあまり聞かねぇな」

アガット
「俺もあんま聞かねぇわ」

ガッシュの呟きにアガットは同意した。

エステル
「そういうもんなのヨシュア?」

ヨシュア
「ん?そうだね。持っていたとしても人前では出さないと思うけど」

エステル
「ふぅん?」

別に堂々と塗っても良いと思うんだけどとエステルは首を傾げた。

ティータ
「アドルさん、良かったらどうぞ?痛そう…」

ひょっこり現れたティータはリップクリームを持っていた。

アガット
「ちょっと待てよティータ」
エリカ
「ちょっと待ちなさいティータ」

ティータ
「ふえ?なぁに?」

アガットとエリカは同時にストップをかけた。
 
エリカ
「よく聞きなさいティータ。あいつは赤毛よ?赤毛の男には近付いちゃダメ!」

アガット
「俺には近付いても良いがあいつはダメだ」

エリカ
「あんたもダメに決まってんでしょ!」

アガット
「うるせーよ!!」

アドル
「えーと…気持ちだけ有り難く貰っておくよ。命が危ないからね」

喧嘩が勃発したので仲裁をティータに任せ、放置する事にした。

ガッシュ
「アドル…賢明な判断だぜ」

ティータに出会ってからロリコンの扉を開きつつあるガッシュは大きく頷いた。

エステル
「それじゃあ私の使う?」

エステルが小物をゴソゴソしていると、いつの間にかアドルの背後にはヨシュアが立っていた。肩に両手がポンと置かれる。

ヨシュア
「アドルさん…まさかエステルの、エステルのを使うなんて言いませんよね?」

アドル
「え、あの、ヨシュア?」

ヨシュア
「エステルの、使いませんよね?」

アドル
「いたたた肩!爪っ…!」

エステル
「ヨシュアったらアドルさんの肩もみしてるの?偉いわねぇ」

ヨシュア
「そうかな」

オリビエ
「ヨシュアくんはね、エステルくんの事になると容赦無いんだよ」

ガッシュ
「成る程ねェ、爪が食い込む程容赦無く肩を掴んでるな。アレが肩もみに見えるのはどうなんだ…」

急に話に入って来たオリビエの解説にガッシュは納得するしかない。
アドル
「君がエステルを想う気持ちはよく分かったよ。だから手を離してくれないかい?」

エステル
「ちょっとヨシュア!」

素直に離れようとしたヨシュアをエステルは呼び止めた。

エステル
「もう、さっきのが肩もみじゃなくてやきもちだってオリビエから聞いたわよ」

ヨシュア
「うっ…」

エステル
「乾燥してるなら言えば良いのに!」

ヨシュア
「え」

オリビエ
「アドルくんの頭上で慎ましいラブコメが始まっちゃったなぁ」

オリビエの一言でなんとなく空気を察したアドルは口を閉ざし、少し口角を上げ2人を見守る事にした。

ヨシュア
「僕は別に」

エステル
「えい」

ヨシュア
「!…エステル…」

エステル
「これでよし!」

ヨシュア
「もう…」

ヨシュアの唇にリップクリームを付けて満足したエステルは笑顔を見せ、そんなエステルの笑顔を見たヨシュアは妬いた自分が馬鹿らしくなって苦笑した。


ガッシュ
「エステルは少しズレてるな」

アイシャ
「そうね…ヨシュアの嫉妬はそこじゃないのよ」

オリビエ
「お?2人は分かってたかい!自分も乾燥してるのにって事じゃなくてさぁ、」

ヨシュア
「オリビエさんちょっとこっちへ」

オリビエ
「え!?まだ最後まで言ってな…アレーッ」

オリビエはヨシュアによってちょっと遠くの茂みまで引きずられていった。
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