*夜襲

夜の山は暗く、木々は風にうなってざわめいている。
クラウドは深呼吸した。森の精気が体に満ち溢れる。
夜の山は大好きだ。そっと歩き回ると森と一体になったような気がして自分の存在が闇に溶け込んでいくようだ。
時折月明かりの下、コンパスで方向を確認しながら山猫のような身のこなしで素早く森の中を移動していく。
一晩歩いて、朝になったらどこかの藪で一眠りしよう。
明日の夕方には着くだろう・・・
この辺りは神羅の制圧圏なので、トラップもない。一人で夜の森を飛ばして歩く。ふくろうの鳴き声が聞こえた。
かなりの距離を行き、森の奥深く入り込んできたころ、夜が明けた。うっすらと物の形が見えてきて、灰色から色溢れる世界に変わっていく。
クラウドはこんもり茂った藪を見つけると中に潜り込み防水シートにくるまった。ザックスはもう寝ただろうか?ザックスが隣にいない事を思うと胸が締め付けられそうになった。おやすみ、と心の中でつぶやいて眠りに落ちた。

夜が明けると、朝露の降りた森の中はしっとりと爽やかだ。
クラウドはもそもそしたピーナッツ味の糧食バーをかじると、水筒から水を飲んで、朝食にした。
地図によるとあともうたいした距離ではない、そろそろ警戒が必要だ。
ブーツに仕込んだダガーを確認する。ライフル以外にも、胸元に短銃も持っているが、その確認。腰にさした大降りなサバイバルナイフも切れ味を確認した。

夕方になる少し前に目指す山小屋が見えてきた。
小屋は林の切れ間にある小さい盆地状の草地に建っており、クラウドのいる位置から林越しに見下ろすと、人の出入りが一目でわかる。気配を殺して、しばらく観察していた。
出入りする兵士の背格好を覚えて、勘定すると、どうも7〜8人いるようだ。
ライフルにゆっくりサイレンサーを装備する。夜の見張りで外を警戒するのは3人だ。この3人は一辺に片付けないと厄介だ・・・

目指す部屋は二階の端の部屋だろう。さきほど女性らしい人影が写っていた。
外の見張りを一辺に静かに片付けたら、侵入して一気にかたをつける。

ためらうように辺りを照らしていた夕日の残照も消え、群青色の闇が森から広がっていく。
かなりの時間、じっと伏せたまま観察していた。やはり7人いる。2人休憩に入ってるとして、5人は一度に倒さないといけない。
隠密行動が肝心だ。一瞬も気が抜けない・・・
ともかくフイをつくことだ。それ以外に勝機はない。
敵が一番油断する時間を捉えよう。

クラウドは危険な狩におもむく時のような気持ちの高ぶりを覚えた。
耳を澄まし、目を凝らしひたすら待つ。月が沈み、辺りはさらに暗くなる。今何時くらいだろうか?まだ夜明けには大分間がある。
見張りのうち二人が壁にもたれて居眠りを始めた。やがて三人目も抱えていた銃を足元に置くと二人の横に座り込んだ。
自分の中の本能ともいうべき野生の勘が告げる。(今がチャンスだ。)

ゆっくり匍匐前進し、ライフルを狙い定めると立て続けに三人を撃つ。スローモーションのように三人は地面に横たわる。
うまくいった。
足音を忍ばせて小屋の入り口に近づく。一階は一部屋だと聞いている。窓からそっと覗くと二人はトランプをしており、残りの二人は壁際の簡易ベッドで眠っている。
ライフルを足元に置き胸元から短銃を取り出した。ゆっくり扉を開き銃を構える。
トランプをしていた二人がハッと顔を上げた瞬間、眉間を打ち抜いた。二人はうつぶせに倒れた。
ベッドに横たわっていた二人のうち一人は上半身を起こしたところを胸を撃ちぬく。もう一人はまだベッドの中で目を見開きこちらに恐怖の眼差しを向けてるうちに無言で撃った。

これで7人。多分朝には交代の人員が来るだろう。それまでの4〜5時間の間になるべく遠くまで逃げないといけない。

室内の奥にある梯子を登り、中二階にある部屋の前まで行くと、鍵が扉の脇にかかっていた。
よかった。死体をまさぐらないで済んだ。
鍵を開け、きしむ扉を開けると、部屋の床で一人の娘が毛布にくるまって眠っていた。

→NEXT(そしてマリアンは・・・@)

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