どう思われているんだろう。
それを僕ひとりで考えるにはあまりに情報が足りなすぎる。かと言って誰かに打ち明けられるような話ではない。僕と彼女の共通の友人には。

また来るね、と彼女は言った。一月ほど前だった。
何年か振りに再会した彼女との間柄は、幼馴染みではなく、依頼人と弁護士になっていた。被告人(彼女の友達だった)は無事無罪になり、同時に僕と彼女の接点も無くなった。
そして、お礼を言いに事務所に来たあの日、彼女はまた来るね、と言ったのだ。
そわそわと待っている自分もどうかと思う。また来るということは、例外はあるけれどつまり依頼に来るということだ。彼女の周りでそんなに事件があっては困る。いや、依頼があるのはいいのだけど。
(……それとも、僕は)
何をするわけでもなくデスクに向かっている。朝。真宵ちゃんはまだ来ていない。
(期待しているのかな、例外、を)
そう、なのかも知れない。
ばたん、とドアが閉まる音がした。心臓が大きく揺れた。所長室のドアが開く。
「おはよ、ナルホドくん」
見慣れた、真宵ちゃんの姿が見えた。
「……なんだ、真宵ちゃんか…おはよう」
なんだとは何よ、と真宵ちゃんがむくれる。僕だってわからない。口をついて出たのだ。多分真宵ちゃんじゃなくても、例え依頼人でも、なんだと言っていたかもしれない。僕はなんでもないよ、と言って、ため息をついた。
もしも、どう思われているか気にしたり、ドアが開いた音に少し期待してしまったり、入ってきた人を見て多少なりがっかりするのが恋だとしたら、



(………しんどいなあ、恋って)





07.12.21
(恋してかっこわるくなる男の子がすきです)

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