名前で呼んでやろう、と思った。反応が見たかったのだ(何て暇なんだ!)。しかし思ったものの、いざ呼ぼうとすると何故か照れてやめる自分に気が付いた。馬鹿か私は、とその度自分につっこんだ。
現在、彼はデスクに向かって書類を睨んでいる。この仕事が終われば恐らく彼は帰ってしまうだろう。彼の仕事の速さが憎たらしい。
御剣さん、御剣怜侍御剣怜侍、怜侍、怜侍さん。と言うか私はそもそもなんでこんなに照れなければいけないんだろう。彼が好きとかではない。絶対。断じて。寧ろ嫌いの部類だ。
最後の一枚が積まれた書類に重ねられた。ふう、と彼が息をつく。
「あ、終わりましたか怜侍さ、ん」
口をついて出た。
彼が驚いて、私を見た。彼は、そういうことは面白くないからやめたまえ君、と言って、顔を背けた。
そこでやっと私は、自分の顔がかなり熱いことに気付いた。



(彼の顔も赤かったことを、私はしらないのだけど。)

07.12.09

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