詩U
□水葬
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1K 畳4畳半
鯖の腐った臭いがする
少しカビたバスルーム
バスタブに張りつめた水面から
何か腐れた臭いがする
扇状に広がる黒髪を掬う
ぷつりと簡単に抜けてしまった
皮脂と角質の浮かぶ水に手を入れる
とろりと水がまとわりついた
蒼白い瞼をぶにゅりと潰し
冷たい頬を引っ掻く
腐食した唇を押し広げ
綺麗に並んだ歯をなぞる
狂気に狂った訳ではない。
快楽などひとつも無い。
涙は溢れることはなく、私の中を酷く蝕む。
君が絶ってと言うならば、
私は君の意のままに。
だから、せめてあと少し。
あと少しだけこのままで。
fin.