詩U

□水葬
2ページ/2ページ


1K 畳4畳半
鯖の腐った臭いがする

少しカビたバスルーム
バスタブに張りつめた水面から
何か腐れた臭いがする

扇状に広がる黒髪を掬う
ぷつりと簡単に抜けてしまった

皮脂と角質の浮かぶ水に手を入れる
とろりと水がまとわりついた

蒼白い瞼をぶにゅりと潰し
冷たい頬を引っ掻く

腐食した唇を押し広げ
綺麗に並んだ歯をなぞる


狂気に狂った訳ではない。

快楽などひとつも無い。

涙は溢れることはなく、私の中を酷く蝕む。


君が絶ってと言うならば、
私は君の意のままに。


だから、せめてあと少し。


あと少しだけこのままで。





fin.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ