<<At each celebration>>




幾分か落ち着きを取り戻したアルケイディア帝国の昼下がり。

ふと手に取ったカレンダーに目を落とした彼は、あることに気づく。



「そういえば・・・」


「どうかしましたか?ガブラス。」



普段から落ち着いた雰囲気で話すガブラスと呼ばれた男が、

珍しくも、感慨深い声を上げたことに少しばかり興味をそそられたのは、

まだまだ幼さの残る、しかし凛々しい顔立ちをした少年であった。



「・・・いえ。」



一瞬話そうかとも思ったが、

それでなくても年端に似合わず執務で忙しい身の、主でもある少年に

これ以上手を煩わせるようなことは、させたくなかった。

できるだけ 負担をかけないよう、過労で倒れないよう守るのは、彼の仕事でもある。



(・・・全く無関係ではないのだが・・・)



だからこそ、やはり話すわけにはいかなかった。

きっと、事情を聞いた彼はこう言いだすに違いない。



『それは素晴らしいことですね。ぼくが直ぐに手配致しましょう・・・―――』



簡単に想像がつく彼のその誠実な姿に、ふ、と笑みがこぼれる。

ますます興味をそそられた少年は、怪訝な面持で”ガブラス”の顔をじっと見つめ返してくる。


「さあ、ラーサー様。そんなことより今日の仕事を早く終えてしまいましょう。」


薄く微笑んで、優しくそう諭そうとする部下。

何もないわけがない。

そう直感が告げている上に、さっさと執務に戻ろうとする態度。

まったく、この上なく怪しい。

なにか隠していることは、明白。



(・・・きっと、この空を自由に駆ける空賊たちは、彼の隠し事なんてあっさりと見破ってしまうんだろう。)



ラーサー少年の思考がここまで来たときに、先ほどまで彼がカレンダーを見ていたこと、

今日の日付が、あの旅の思い出の日であったこと・・・

そこまで行き着いたとき、

・・・もしかして、、と。



「そういえば、1年前のあの日も今日みたいに暑い日でしたね。」

「え?」

なにか書類を書くことに必死だったのか、鎧をガチャリ、と鳴らせながら体ごとこちらの方を向いてきた。


ラーサーは自分の背丈の倍ほどあるかとも思われる彼が、

全く似つかわしくもない頓狂な声を上げることが とても楽しく、また面白くも感じる。

いまの彼の反応は、ラーサーの予想を確信に変えるには十分な反応だ。



「なにを、書いているんですか?―――・・・バッシュさん??」

「―――・・・ッ!!!!」



小手でそのカードを隠すまでの一瞬。

ラーサーは、確かに花柄で彩られた、奇麗なカードへ孤軍奮闘する彼の”隠し事”を垣間見た。


思わず、クス、と笑ってしまうのは、今度はラーサーの番。


「あ、いえ、ラーサー様、これは・・・」


隠れて何かをしていたことが恥ずかしかったのか、

それとも、常に花柄のカードを机に忍ばせていることがバレたのが恥ずかしかったのか・・・。


ラーサーは、両手を上に上げて少し座り疲れた腰を伸ばして歩きながら言った。


「さあ。執務を再開しましょう、ジャッジマスター・ガブラス。」

「?」

「・・・”彼女”への、開店一周年記念への贈り物は、もう手配済みですよ?」

「・・・!!」


そう、旅の途中。

一行が立ち寄った店は、開店の その当日であった。

そこにいるだけで癒される、きっと、何年先になっても素敵な店構えを見せ続けてくれるだろうその店は、

砂漠に咲く一輪の、あの赤い花のように、人々の心を和ませ、また潤してくれるような・・・

そんなところだった。


アーシェ一行と共に行動をとっていた時に、ラーサーも立ち寄ったその店。

マスターを名乗るその女性との出会いを、少年もまた忘れてはいなかった。




(まったく、この方だけは・・・)

バッシュは、やはり先ほど書きかけたカードを取り出して、最後まで書ききり、

きっと祝いの品で満ちているであろうその店に、彼も贈り物とカードを共に送った。




あの空族達は、きっと祝いの酒でも持って直接行っているであろうし、

アーシェ殿下も今日のこの日を忘れていることはないであろう。



「ラーサー様。早く仕事、片づけてしまいましょう。」


ニコリと頷きながら、

「そうですね、きっと夜の乾杯には間に合うでしょうから。」






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Congratulations on First Annibersary!!



P.S..It goes tonight.


















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