Fake Blue

□NO10. 星の声
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森を抜けると、乾いた地が広がった。
彼方に見える渓谷は、夕日に染まって美しかった。
その中のひときわ高い崖に向かって、レッドXVを先頭に歩き出す。

「レッド、宿はあるのか?」

「心配するな、ここを訪れる者は多い」

「そうなんだ・・」

日もとっぷり暮れた頃に、レッドXVの故郷の村に辿り着いた。
渓谷をくりぬいて作られた建物に、ほの暗い明かりが灯っている。
入り口に立つ村人に気づいたレッドXVは走り出す。


「ただいま〜、ナナキ、帰りました〜」

「おぉ、ナナキ。無事だったか!さあ、ブーゲンハーゲン様に挨拶を」

「ナナキ?」

ナナキという名と、彼の変貌ぶりにみんなは驚いた。
威厳さえ感じられた彼の言動が、ラティアやユフィくらいの幼さになってしまったからだ。

「ここは、どういうところなの?」

ティファが訊ねると、村人はにっこり笑い、

「ここには、世界中から『星命学』を求める人たちが集まって来ます。どうぞ、お入りください」

「ナナキというのは?」

「ナナキは、ナナキ。彼の名です」

彼としては、当たり前のことを陳べたのだろう。しかし、ティファたちは首を傾げるばかりだ。
そこへ、エレノアが補足する。

「レッドXVっていうのは、宝条がつけた実験ナンバーよ。私もそう呼んでいたけどーーー本名を呼ばれたくなかったんじゃない?あそこでは」


実験動物として、単なる物のように扱われていたからーーーと、少し悲しげに呟いた。
そこへ、先に行きかけたレッドXVが戻ってくる。


「ここがオイラのーー違う違う。ここが私の故郷だ。私の一族は、この美しい谷を守って暮らしてきた」

「あなたのご両親もここに?」

「あぁ。だが、勇ましい戦士であった母は死に、腑抜けの父は逃げ出し、一族は私だけになってしまった」

「腑抜けの父?」

「あぁ。父は、見下げた腑抜け野郎だ。だから、ここを守るのは残された私の使命だ。私の旅は、ここで終わりだ」

「お〜い、ナナキ〜帰ったのか〜?」

酒屋とおぼしき店から、老人の声がした。嬉しそうな声に、レッドXVは

「今行くよ!じっちゃん!」

その声よりさらに喜びを込めて叫んだ。
飛ぶように走っていくレッドXVを見送りながら、エアリスは呟いた。

「ね、私、色々聞いてみたいことある」



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