Fake Blue
□NO5. 月が導く闇
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待っていた
この刻を
地中深く眠っていた時を思えば
なんと短い
さあ
我をここからーーーー
「 エレノア 、ご苦労だったな」
社長室に戻ったプレジデントは、上機嫌で エレノア に話しかけて来た。嬉々として゛約束の地゛のことを語る彼の声を聞き流していると、こそりとパルマーが入って来る。
「プレジデント、お話がーー」
パルマーの声を聞いた途端、プレジデントの顔が不快に染まる。
「 エレノア 、コイツを部屋の外へ出せ」
「・・・パルマー統括」
ため息をつき、 エレノア は抵抗するパルマーを追い出す。だが、暫くするとまたドアが開く。
「まだいたのか。話すことなど何もーーーお前は!?」
街を見下ろしていた エレノア は、ガラスに写る人影に目を見張る。
「ーーー!!」
振り返った エレノア の身体に、銀色の光りが一筋走った。
60階からエレベーターに乗ろうとしたルクシーレは、肩を落として出てくるパルマーとすれちがった。
パルマーに気付いたルクシーレは、壁際に立ち頭を下げる。
余程切羽つまっているのだろう、パルマーはルクシーレに気付かずに行ってしまう。そんなパルマーの様子に
「フン・・あぁはなりたくないな」
鼻で笑った後、エレベーターに乗り込んだ。最上階で降りると、社長室へ向かう。もっとも、この階には社長室しかないが。
「しかし・・あの女もほんとに兵器が好きだな。頭ん中、武器のことしかないんじゃないか?」
ルクシーレは、スカーレット兵器開発部門統括から、対テロリスト用の兵器開発のための許可を貰いに来た。
新しい武器を作るために金をくれというわけだ。
「ん?」
開きっぱなしの社長室のドアを不信に思いつつ、部屋へ入る。
「プレジデント、兵器開発部門統括スカーレットの秘書、ルクシーレです。書類にサインをーープレジデント・・・っ!!」
プレジデントのデスクの前にいた人物が振り返る。
その人物の顔を見たルクシーレは、書類をバラバラと撒き散らしながら後ずさる。目は眦が裂けんばかりに見開いていた。
「お、お前は、セーーうわっ!!」
ひと振りで、ルクシーレは倒れる。
音を立て刀を振ると、引き裂いた血肉が床に散らばる。
動くものがなくなった部屋に、月に照らされた彼の影だけが動く。やがてその影は、闇に溶けるように消えた。
スゴスゴと退散したパルマーだったが、今いちどプレジデントに直訴しようと最上階へ戻って来た。未練がましくそっと社長室に入る。
「ーープレジデント・・お願いです、プレジデント。・・・プレジデントーー?」