Fake Blue

□NO2.スラム街の花売り
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―――大丈夫か?    聞こえるか・・・?

「・・・・・あぁ」



―――あの時は、ヒザすりむいただけですんだけど


「あの時?」

あの時って、なんだ?


―――こんどはどうだ?   起きられるか?


「ーーこんどは?」



―――気にするな   今は、身体のことだけ考えるんだ   身体・・・動かせるか?



「やってみる」



―――どうだ?


「あっ!動いた!!」


―――ゆっくりな   少しずつ、少しずつ・・・



「もしもし?」


「わかってるさ。なあ・・・あんた、誰だ?」


「クラウド」

目を開けると、鳶色の瞳が自分を見下ろしていた。

「大丈夫?」

ラティアが声をかけると、クラウドはゆっくり上半身を起こす。

「あぁ・・ここは?」

「スラムの教会。伍番街のね」

薄暗い廻りを見渡していると、ラティアの後ろから女の声がした。柔らかく、穏やかな声。
顔を上げ、ラティアの背後を見る。
そこには、ピンク色のワンピースを着た、長い髪の女が立っていた。
エメラルドグリーンの瞳が、イタズラっぽく笑っている。


「あなたたち、いきなり落ちてくるんだもん。驚いちゃった」


「落ちてきた・・・」

「屋根と花畑、クッションになったのかな?運いいね」

「花畑?」

言われてみれば、手の下には柔らかな感触があった。
白や黄色やオレンジの小さな花たちが、クラウドの身体の下で窮屈そうに花びらを広げている。
クラウドは立ち上がり、花を踏まないようにその場を出た。

「・・・それは悪かったな」

「気にしないで。お花、結構強いし」

ラティアは、クラウドの無事を確かめるように腕に触れる。
クラウドと目が合うと、嬉しそうに微笑んだ。

「ケガは?ラティア」

「ううん」

大丈夫、とラティアは首を振った。
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