シネマコンプレックス

□第8幕 Desert
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窓から射し込む日差しに、ラグナはやっと目を開けた。

「ふあぁぁぁ〜」

顎が外れそうなほど大きなアクビをすると、ベッドからのそのそと起き上がる。
身支度を整え、パンとコーヒーの朝食兼昼食をすますと、見計らったようにドアがノックされた。

「開いてるぜ〜」

そう言うやいなや、ドアが開く。開けたのは、小さな女の子だ。

「ラグナおじちゃん、お客さんだよ」

「あ〜?俺に客?どんなヤツだった?」

「変な服のおじさん。いま、レインと話してる」

「ん?店にいるのか?」
         ・・
「そうだよ。だからエルが、ラグナおじちゃんを呼びに来たの。えらい?」

「えらくない!一人で危ないじゃないか。モンスターに襲われたらどうするんだ?」

「隣だもん、大丈夫だよ!」

「隣でも、危ないの!エルなんか、小さくて可愛いから、モンスターに狙われてるんだぞ。捕まって、チューチュー血を吸われちゃうんだぞ。そんなことになったら、おじちゃんは泣いちゃうぞ〜」

「大丈夫だもん、ラグナおじちゃん、すぐ呼ぶもん。すぐ来てくれるんだよね!」
        
「あっ、待てよ、エルオーネ!」

慌てて追うと、エルオーネはドアのすぐ横で笑っている。

「待ってたよ、えらい?」

「うん、えらいえらい」

ラグナはエルオーネの頭をグシャグシャと乱暴に撫でる。

「エルオーネのお父さん、お母さん。エルオーネは、今日も元気です。な?」

「は〜い!」

2人は手を繋ぎ隣のパブに入った。すると、宇宙にでも行くような奇抜な服を着た男が振り返る。

「ラグナくん、久しぶり」

「キロス!!」

ラグナはしゃがむとエルオーネに説明する。

「おじちゃんの友だちだよ。変な服だけど、悪い人じゃないぞ」

すると、カウンターの向こうで開店準備をしている女性が声をかける。

「エルオーネ、大人しくお部屋の中で遊んでちょうだい」

「は〜い!」

エルオーネは、言われた通り自分の部屋へと行った。


「元気そうだな」

「お前もな」

2人はカウンターの椅子に座ると、互いの無事を改めて確かめ合う。ラグナがカウンターの女性を、この店の主と紹介する。

「レインです」

コーヒーを出しながら、レインは名乗った。
しばし互いの近況を報告しあっていたが、ラグナが懐かしそうにあの時の話を持ち出す。

「な、あれからどれくらいだっけ?俺たちがセントラから大脱出してからよ」

「あれは、惨めな敗走と言うな、普通は」

「やっぱり」

「ま、とにかく。あれから1年近くだ」

「俺は、その半分以上、ベッドの上だったぜ。もう、身体中の骨が、バラッバラ」

「私が看護しました」

「ありがとう。私からも礼を言う。私の中の怪我は1ヶ月くらいで治って、そのあとはーーーあんたを捜してた」

「なんで?」

「軍を辞めて・・・まぁ、退屈しのぎだな。あんたという娯楽がないと、人生は退屈だ」

「ひどいこと言うよな。俺は真面目に生きてるんだぜ」

2人は真顔で話しているのだが、それ故に余計に可笑しさが増、レインは笑い出す。

「レイン・・傷つくぞ」

「ごめんごめん。でも、わかるわ。この人がいると、退屈しないもの」

そうだろうと、キロスも頷く。

「さて、何か聞きたいことは?」

「ウォードは?ウォードは元気か?」

「・・・ウォードも軍を辞めた。幸運にも就職が決まって、元気に働いている」

「何やってンだ?」

「D地区収容所で、クリーンアップサービス」

「ひゃあ〜、ち〜と似合わねぇけど、元気ならいっか」

「彼は、あの時、喉を怪我してな。治療したんだが・・・結局、声は戻らなかった。まぁ、顔を見れば、何を言いたいのかわかるけどな」



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