シネマコンプレックス
□第1幕 Guardin Force
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熱を帯びた額が、沈んでいた意識を呼び戻した。
ゆっくり瞼を持ち上げると、白衣を着た保健医のカドワキが、ベッドを見下ろしていた。
「大丈夫かい?」
「・・・・・はい」
低く落ち着いた声で尋ねられ、額の痛みがそう答えた。
「あんまり無理すんじゃないよ」
カドワキは、スコールの瞳を覗き込む。
「ん、目つきしっかりしてきたね。自分の名前、言ってみな?」
「スコール・・・レオンハート・・」
目の焦点が定まったことを確認すると、白衣のポケットに両手をいれた。
「訓練の時は、少し手加減したら?」
「・・・サイファーに言ってください」
「あの子はねえ・・・何を言ってもムダってやつだね。相手にしなけりゃいいんじゃないの?」
カドワキは、軽いため息をついた。
恐らく、サイファーに意見をしたことも幾度となくあったのだろう。それを思い出したように苦い表情を浮かべた。
「逃げるわけにはいかないから・・」
「カッコつけたい年頃なんだねぇ。まぁ、ほどほどにしておきな。
さてと、あんたの指導教官はキスティス先生だね。連絡するから待っていなさい」
ベッドから離れると、ペタペタとサンダルを鳴らして隣のフロアーに移動
した。
フロアーにあるキャスター付きのワゴンにのったコードレスホンを取り上げ、各教官に与えられている個室の番号を押す。
「キスティス先生?あんたの生徒、引き取りに来てよ。・・・はい・・はい・・うん、ケガは大丈夫だね。
まあ、痕は残るだろうけど・・・そうそう・・じゃ、早く来ておくれ」
スコールは左手で額の傷を抑えると、少しウンザリしたように今いち度ベッドに横になる。
ウンザリしているのは、サイファーに対してではない。
絡んでくる彼を、無視出来ない自分に対してだ。
相手にしなければいい―――
何度自分に言い聞かせても、あの挑発する彼の瞳を見ると、誘いに応じずにはいられなくなる。
―――アイツは退屈しているだけだ。だから・・・・
カーテンの裾を揺らし部屋に流れて来るそよ風が、熱をもった傷口に心地良った。
その時―――
「スコール・・・また、逢えたね」
風にのって聞こえてきた、優しいがどこか淋し気な声。
その声のした方に顔を向けると、隣のベッドとの仕切りガラスに、立ち去る青い服が見えた。
「・・・・サラ?」
何だ?―――声を聞いた途端に、脳裏に広がるどこか懐かしいしい景色
その景色を思い出そうと、スコールは目を瞑った。
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