頂き物

□手をつないで、寄り添って
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アヤの口ぶりから、とんでもなく遠いところへ連れて行けと言われるんじゃないかと思っていたが……カームならそう長くかかる距離じゃない。

エッジを抜けて一時間と少し、走るだけでカームへ着いた。



「私、自転車大好きなんだけどバイクもいいね。……自分で運転したいとは思わないけど、好きだな」

ヘルメットをとって、乱れた髪を整えるアヤ。……要するにまた乗せてくれと言われているんだと気付いて、苦笑がもれた。
今まで頑なに断っていたのに、こんなに嬉しそうにされたんじゃお手上げだ。



「最近忙しくて一緒にお出かけなんて出来なかったよね。嬉しいな」

「……なぁ、なんでカームなんだ?」

「ん?……クラウドと散歩したかっただけ」


散歩ならエッジでも充分な気もするが、少しでも遠出したかったんだろうか。もしかしたらバイクに乗るための口実だったのかもしれない。
……別にどっちでもいいか。



「クラウド、手」

「………」

……差し出された手を一度下げさせて、体の横に戻ったところで自分からアヤの手をとった。
アヤは笑ったが……些細なことでも主導権をとられるのは
、なんとなくいやだった。




カームは小さな街だ。アクセサリーショップなどもあらかた見つくし、後はベンチに座って色々な事を話していた。



小さな悩みや最近の嬉しかったこと面白かったこと、あそこの通りには猫が多いから幸せだとか料理が上手にできたとか、日常な些細な事をにこにこしながら語るアヤ。

決して珍しくはない出来事でもアヤにかかれば物語のようになるのだから不思議だ。

……そんなアヤにつられて俺も自分のことを話すと、アヤはぴたりと黙って嬉しそうに俺の話を聞いた。





「……そろそろ帰るか」

会えなかった分を埋めるように互いの話をし尽くした時、時計台が17時の鐘を鳴らした。

急いだ運転はしたくはないし、あまり遅くならないうちにアヤを送りたい。



時間の計算をしながら立ち上がってアヤを振り返ると、アヤはまだベンチに座ったままだった。


「……クラウド。
最後にもう1つ行きたいところがあるの。付き合ってくれる?」

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