月光

□ZERO
2ページ/5ページ

『あぁ、クソっ
 何だって今日に限ってこんなに人が多いんだ
 邪魔くさくて仕方ない』

人の波を擦り抜けてる間も
イルカの浮気疑惑が解けない

『クソ、クソ、クソっ
 俺が居ない間に』

既に妄想は爆発して
ピタリと足が止まった

『本当に浮気だったら
 俺はどうすれば良い…』

所詮、自分は男だ
相手が女だったら、絶対に勝てない
柔らかい身体も
子供も産めない

「………」

何だか、酷く悲しくなった
自分の妄想で凹んだ

「………」

イルカの部屋の玄関

「っっ」

開けようとしたら
鍵が掛かっていた

怒りで頭がクラクラする

このドア打っ壊してやろうか?

そう思った時には遅かった

「イルカ!!」

玄関を、壊していた…

「イルカ、イルカ!?」

何度呼んでも返事が無い
厠も浴室も、押し入れも見た

……居ない……

ゴ、っと
頭に血が上った

部屋から飛び出すと
里の中を必死に探した

「…ド畜生っ!!」

逢いたくて仕方ないのに
こんなに逢いたいのに

スン、と
鼻を啜って、走った

行き先が解らないから
もう、がむしゃらに突っ走った

「よぉ、カカシじゃねぇか」
「アスマ!!」
「どうした」
「イルカ見なかったか」
「イルカ?…いや、今日は見てねぇな」

その言葉に小さく舌打ちして
また走り出す…

「どしたの、アスマ」
「いや…アイツ変わったな」
「そうね…確かに」

カカシの様子に笑ってしまう
今まではあんな姿を晒したりしなかった
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ