月光

□ourselves
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「…先生、帰らないのか」
「…ごめん」
「別に良いけど」

ぶっきらぼうに言いながら
珈琲を淹れてくれる

「…サスケ…」
「なんだ」
「俺な…」
「カカシと喧嘩したんだろ
 聞かなくても解る」
「………」
「先生はカカシと喧嘩した時しか
 俺の家に来ないからな」

ククっと、喉の奥で笑われた

「ナルトに…逢いたくなったんだ」
「逢えば良いだろ」
「逢ったら、酷い事を言う」
「………」
「カカシさんの言う通りなんだ」
「俺には関係ない」

珈琲を飲み干し
ふと、イルカの顔を見詰めた

「サスケ?」
「…先生、チャクラが無駄に出てる」
「え?」
「疲れないか?」

言われても解らない
自分でチャクラを放出している訳でも無い
何故なのかも、解らない…

「んで、どうすんだ」
「……うん」
「………」

ふぅ、と溜息を吐くと
手を引かれた

「狭いけど、我慢しろよ」
「…ごめん…」

サスケの優しさに甘える
余計な事を言わないし、聞かない
ただ、必要な優しさだけをくれる

「……明日、演習だから」
「解った…」

自分より幼い子供に抱き締められて
安心する、なんて…オカシイ
それでも他に行く宛てが無い

自分の部屋に居たら
きっと、カカシが来て
また顔を見たら喧嘩になる
そうなったら
今度は自分が彼を傷付ける
酷い事を言うに決まってる

「……大人って、面倒なんだな」

眠そうな声でサスケが言った

「…そうだな…」

本当にそうだ
面倒くさい事ばかり

でも、子供の頃はもっと面倒だった
1人になりたくなくて馬鹿やって
毎日泣いて…

「………」

繰り返してる内に、大人になった

大人になっても、変わらない

自分は馬鹿やって
大切な人を怒らせて、喧嘩して
我慢すれば良いのに叩いて
顔を合わせるのが気まずくて
逃げ道を作って…

何一つ変わらない

いや…昔より酷いのかもしれない

「………」

言い返したりしなければ良かった
カカシに『アンタ、自分が何してるか解ってんの!?』
そう怒鳴られた時に
『ごめんなさい』って言えば
こんな事にならずに済んだのに…

どうして…言えなかったんだろう
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