月光

□Prisoner Of Love
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「あの人…なんですか…」
「うん」
「どうして…」
「…うん」
「男ですよ」
「…そうだね」

アンコが物凄い目で睨んでくる…
自分に精一杯の言葉を伝えた女性

今は、怒り…なのか
落胆なのか…

「理由は、俺が知りたいよ」

ポツリ…そう告げて
教室を振り返る

きっと、真面目なあの人は
理由を考えて
苦しんでいるのに…

「…嘘、だよ…」

困らせるつもりじゃない、は嘘。

困らせても、泣かせても
どんな手を使っても

自分のモノにしたい
独占したい、傍に居たい

触れたい…

愛して欲しい…

「…俺が愛してるのは
 イルカだけだよ」
「っ…」

呟くと、頬が痛んだ…

ピリピリして
口の中が鉄臭い…

少なからず
自分を好きだと云う人間を泣かせて、傷つけた
自覚しても、どうにもならない

「…イルカだけだよ…」

自分の総てが
愛していると訴えて苦しい

こんな感情は、今まで知らなかった…
自分には必要ないと思っていた…

それなのに…

『どうして』

こんなにも、惹かれるのだろう

最初は何も感じなかった…

「……」

最初は…何も…

「…嘘だ…」

感じなかった?

「……」

初めて見た瞬間から
多分、好きだった。

子供心にもそれは理解出来た
あぁ、俺はこの子が好きなんだって…解っていた

九尾に親を殺された
可哀想な子

そう、思った?

「……」

違う…

あんな状況だったのに
一瞬で目を、心を奪われた
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