優夢

□大切だから・・・
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「ほら、写輪眼の…」
「あぁ…あの有名人ね…」

職員室で耳にしたのは
あの人の話…

誰々とどうこう、とか
任務でどうこう…って

「………」

余り、良い話は聞かない…
だけど…それは、あの人の事を良く知らないから…

「………」

確かに厳しい人には違いない
それでも、忍…
しかも上忍なら
それは当然の事だと思う…

ぼんやりと、教室に向かう途中
見慣れた背中…

「カカシさん?」
「…ん?」

珍しい
凄く、珍しい
アカデミーに何か用事でも有ったのだろうか?

「珍しいですね」

問いかけながらも
逢えたのが嬉しくて、自分でも何を言ってるか解らない

「イルカ先生に、逢いたいなぁって…」

少し照れた様な目元…
何となく恥ずかしくて俯いた…

慣れて、ないんだ…
こう云う雰囲気
何だかフワフワしてて、暖かいと
泣きそうになる…

「じゃ、またね」
「はい」

背中を見送った瞬間…
体温が下がったみたいになった

「………」

暖かい存在が
今は、居ないからだ…と
直ぐに解った…

「………」

カカシさんと知り合って、半年…
食事も何度か行ったし
喧嘩みたいな言い合いもした…
酔った勢いで、抱き付いた事もある…

「………」

理由なんか…
もう、解らない…

「………」

解らないけど…
自分の気持ちに、嘘なんか無い

ただ、好き、なんだ

何がどう、とか
何処がどう…なんて

そんなのは、何もなくて
ただ、好き…

あの人が好き

厳しい態度や物言いの中に
有り得ない位の暖かさ…

「………カカシさん」

伝えたら
どうなるんだろう…

冗談だと思われるか
曖昧に返されるか
嫌われるか…

「………」

嫌われたら…どうしよう…
凄く、怖い…

「……っ」

ベストを握り締めて
襲ってくる痛みに耐える…

それでも…伝えたい…
たった、一言…

「………」

授業を終えて、廊下を歩く…
ただ、来た道を戻るだけなのに
窓から見えた空に、足が動いた

「………」

屋上で、少し落ち着こう…
もう少し冷静になってから

あの人を探して、伝えよう…
他の誰かに奪われるくらいなら
嫌われたって、構わない

自分の気持ちを知ってて欲しいから…


〜Side:I.end〜
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