優夢

□不真面目な女神
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「あっ……」

しまった…と云う顔をして
空を見上げた…

「うーん…」

過ぎ行く人が、彼を羨望の眼差しで見て行く…

彼の名は

はたけカカシ

木の葉隠れの里で
もっとも有名な忍

『里の最終兵器』
『最強のコピー忍者』
『写輪眼のカカシ』
『里一番の業師』

等々…
彼の名前は実力と共に、近隣の国にも知られている

「雨、降りそうだなぁ」

ぼんやりと、曇り出した空を見上げる…

「傘…有るのかなぁ…」

ユラユラと、重みを増す雲

「あの人…傘持って行ったかなぁ」


「っくしゅん!!」
「あら、イルカ先生、風邪ですか?」
「あ…いぇ、急に…」

大丈夫です…と、笑いながら
テストの答案を見遣る

彼の名は

うみのイルカ

中忍で有りながら
三代目火影や、保護者、生徒、里の人達から
壮絶な信頼を得ている
アカデミーの教師

「あら…イルカ先生、雨ですね」
「え…あー本当ですね、予報では怪しかったのに」
「先生、まだ残るんですか?」
「えぇ」
「それじゃぁ、頑張って下さいね
 お先に失礼します」
「はい、お疲れ様でした」

同僚と挨拶を交わし
答案を見直す…

一人きりの職員室
窓に当たる雨音

何となく…心地良かった

「ふぅ……」

一段落して、時計を見れば
6時を回っていた…

「ん?」

何処からか…
足音が聞こえる
それも、廊下を走っている

「……?」

ドアを開けて、忘れ物をした生徒でも居るのか?
と、イルカが辺りを見る

「イッルカせんっせ―――!!」

足音と共に
素っ頓狂な声が聞こえて
驚いたイルカが反射的にピシャリとドアを閉めた

「あぁぁ!!閉めないで、俺です!!」
『あ…ぇ?カカシさん?』

再びドアを開けると
カカシがニッコリと笑っている

「どうしたんですか…」
「雨降ってるから、お迎えです」
「……はぁ」

曖昧な返事をして
ふと、カカシの足元を見た…

「ちょっと、ずぶ濡れじゃないですか!!」
「アハハ、途中で降られちゃいまして」
「何を暢気に…脱いで下さい」
「いや、大〜丈夫だって」

そう言われても
前髪はすっかり落ちて、雫がポタポタと伝っている

「…火遁は苦手なんです、俺」
「はい…すみません…」

イルカに一睨みされて
カカシがベストを脱ぐと、イルカは奥からタオルを持ってきた

「ほら…しゃがんで…」
「あ…すみません…」
「全く…貴方って人は…」
「だって…イルカ先生、傘持ってるか知らないし」
「置き傘位有ります…
 アカデミーなんですから」
「だって〜…相合い傘したいじゃない」

ワシワシとカカシの頭を拭く手が
ピタリと止まった…

会話で容易に推測出来る通り…

はたけカカシと
うみのイルカは

恋仲で在る。

しかも、告白はカカシから

「何…言ってるんですか…///」
「イルカ先生と相合い傘、ロマンチックでしょ?」
「ロマン…て…」

乙女座気質バリバリで
小さく笑うカカシに
イルカが深い溜息をついた

「先生、まだ帰らないの?」
「採点が残ってますから…
 あ、カカシさん、待ってる間に服乾かせますよ?」
「んー?」
「風邪ひきますから」
「うーん…」

煮え切らないカカシに苛々して
無理矢理、上着を引っ掴んだ

「ちょっ、イルカ先生!?」
「ほら、腕上げる!!」

威圧感に腕を上げれば
上着を脱がされた…
職員室の手洗い用シンクで
カカシの上着を搾ると
水が滴る…

「イルカ先生?」
「貴方…馬鹿ですか…」
「……否定はしない、かな」
「ちょっと待ってて下さい」

カカシの上着を置いてイルカが出て行った…

カカシは苦笑しながら、大人しく待つ
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