月光

□ワールズエンド
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「………」

アカデミーの教室
夕焼けが差し込む
いつもなら、何も気にならない
本当に些細な気配まで、自分を苛つかせる

「………」

手の中には、二枚の紙

「………」

その紙を睨み付けた侭
もう、ずっと動けずに居た

「………」

顔写真の下には
際立った任務名…

『神無毘橋の戦い』

「………」

『神無毘橋の戦いにて、殉職』

「………」

苛々して、一枚の紙を置いた…

「…イルカ、先生?」
「……何か」

入口から同僚が入ってくる
教員のわりに、化粧の濃い女性

「あの…今夜、食事でも…」
「………」
「イルカ先生?」

自分の顔を見て
赤くなりながら告げる
多分、普段通りにしてれば
マシだったのだろうが…

出来ない

「何故ですか」
「え…あの…」
「私には、同行する理由が有りませんが」
「…ごめんなさい…ご迷惑、ですよね」
「私には、愛する人が居ますので」

そこまで言うと
女性は会釈して走って、出て行った…

「………」

手の中には、一枚の紙…

「…うちはオビト…」

それは、呪わしい名前

自分にとって、忌むべき名前…

「………」

蝕み…壊し、奪い…

護り続ける…

「………」

嫉妬…
有り得ない程の嫉妬
唇を強く噛み締めて紙を睨んでいたら
口端から、血が伝った…

「…いい加減、出て来たらどうですか」
『………』

目の前に立ったカカシが
慌てながら唇を拭った…

「俺の何を調べてるの…」
「………」
「それに、女性にあんな風に言ったら可哀相だよ」
「………」
「イルカ先生?」

カカシの心配そうな右目を睨む

「貴方の写輪眼について調べてました」
「………」
「俺は相手に期待させるのは嫌いです」
「…うん…」
「オビトさんの、ですね…」
「うん…」
「移植したのは、リンと云うチームメイトですね」
「そうだよ」
「その傷も…神無毘橋で、ですね」
「うん…俺の上忍祝いに
 オビトがくれた…」
「………」
「でも、何だって今更…」
「…今更?」

イルカの眉が寄り
何時もの穏やかさは微塵も無い…

「今更…か…」
「ちょっと…イルカ先生?」
「俺は…貴方が愛しいです」
「うん」
「カカシさん…」
「何?」
「俺には、貴方に遺せるモノが、何一つ無い」
「………」
「…今更ですがね
 狂い死にしそうな程の嫉妬をしてます
 オビトさんとリンさんに」

イルカが握り絞める手が
細かに震えている…
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