月光

□理想論
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上忍待機所
いつものメンバーが集まって
何か話している…

「でさ、ほら…」
「あ〜知ってる、知ってる、断ったんでしょ」
「信じらんないよね、中忍でしょ?」
「言えてる、言えてる」
「でも、中忍にフラれるって思わなかったんじゃない?」

くのいち連中が何やら笑いながら話している…

「…紅」
「先週の話でしょ」
「…先週?」
「うみのイルカが上忍を振ったって」
「………」
「へぇ〜あのイルカが、ね」
「それも、くのいちでもかなりの美人」

紅とアスマの言葉に、ぼんやりと遠くを眺めていた

「中忍のくせに、ねぇ」
「どんな奴なの?」
「普通…じゃない?」

良く知らないのに…
女ってのは、本当に噂話が好きだ…

「カカシ?」
「空気悪いし、帰るわ」
「そう」

廊下を歩いていると、渡り廊下の真ん中
二人…立っている

「………」

虚ろな瞳で見ていた…
一人は、特別上忍で
一人は…うみのイルカ

「…すみません…」

二人とも、男

「私には…好きな人が居るので…すみません」

律儀に断り
相手が消えた…

「………」
「はたけ上忍…」
「…程々に…場所も考えた方が良いよ」
「………」

また、イルカが噂をされるだろう

こんなに頑張ってる人が悪く言われるのは
自分も嫌だ…

それに…

「……そろそろ、返事聞かせてよ…」
「………」

イルカと擦れ違いざま
小さく呟いた…

人気の無い資料室で告白したのは
一ヶ月前…

考えさせて下さい、と…

微かに震えた声で答えた

「……はい」

カカシの背中に伝えたら
無性に泣きたくなった…

カカシは…見ていた…
自分が相手をフル場面を

『好きな人が居ますから』

そう、答えた自分を…

「…………」

部屋に戻って、壁に凭れる…
ズルズルと足の力が抜けて行く

「…カカシさん…」

小さく名前を呼ぶ…

嫌いじゃない
恐いくらいに好き

でも…自分は男だから
いつかは飽きるだろう…

「………」

そうなったら…
立ち直れない

子供じゃないから、現実を見ているから
失う恐怖に過敏になる

「カカシさん……」

目をつむり
唇が震える…

「好き…です…」

告白された時
嬉しくて頭が真っ白になった…
当然、はい、と答えるつもりだった

「好き……」

それなのに
考えさせて下さい、と…
口が勝手に答えていた

「…好き…」

恐い…
あの人に嫌われるのが
あの人に飽きられるのが

あの人を…失うのが…

「………」

だから、答えられない
一度言ってしまえば
もう、戻れない

自分が盲目的なのも知っている
束縛もしてしまう

解っているのに…

愛しい…

「カカシさん…カカシ、さん…」

愛しい

ただ…理由なんかなく
あの人が愛しい…

過去も何もかも関係なく
あの人が愛しい

力の入らない足を奮わせて、立ち上がる

「………」

立ち上がってしまえば
あとはこっちのもの
勢いを付けて、走り出す
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