月光

□夏という光の飛沫
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頭が痛くなる位に眩しい…
欝陶しく、纏わり付く熱

待機所に一人…
暇を持て余し、愛読書を拡げた

「…………」

ふと、廊下に目を遣れば
ピョコピョコと跳ねる黒い髪…

「…………」

うみのイルカ

大量の荷物を手に、ヨロヨロと蛇行している…

「…ぁ…あれ?」

瞬身で前に回り、荷物を半分持ち上げる

「大丈夫?」
「はたけ上忍っ!!
 ぁ、あり、がとう…ございます」

何度も頭を下げて
申し訳なさそうにしている

「何処まで?」
「資料室です…すみません」
「良いよ…俺、任務も無いし」

この所立て続けに任務をしていたせいか…
受付に行っても『少しお休み下さい』と言われ
火影にも同じ事を言われた…

「うみの中忍は…」
「……?」
「あー…いや、何でも」

雑務をしている人に
『任務に出ないの?』とも言えない…

「私は…内勤が多いんです」
「……ぁ」
「ここ最近は、書類整理が多いですね…」

苦笑して、また、よろけた…

「…す、すみません…」
「んーん…危なっかしいね…貴方」

片手で荷物を持ち
もう片手でイルカの腰を支えた…

「…どしたの?」
「ぁ…すみません…」
「謝ってばっかだね」

クスクスと小さく笑って
前を向く…
イルカはその横顔を眺めていた…

「ありがとうございました、はたけ上忍」
「どう致しまして」

資料室の机に置くと
これまた、丁寧に礼を言ってくる…

「お礼、させて下さい」
「いや…別に気にしなくて良いよ」
「そんな訳にいきません…ダメです」

必死なイルカの顔に
数回瞬きをしてから…

「じゃ……」
「はい」
「髪、下ろした所見せて」
「………は?」
「額宛て外して、髪下ろして?」
「ぇ…でも…」
「お礼はそれで良いから、ね?」

目を細めて告げると
オズオズとイルカが額宛を外し
髪を括っていた紐を外した…

「ぁの…はたけ上忍?」
「……………」

サラリと揺れる毛先…
漆黒の髪…

髪型一つで、こんなに印象が変わるのか…
と、しばし見惚れた

「こんなので…良いんですか?」
「充分だよ…」

スッ…と、手を伸ばし
耳に掛かる髪を指先で梳き撫でた…
一瞬、ビクっと肩が跳ねる

「…ありがとう」
「…ぇ?」
「じゃ…またね」

イルカに優しい笑みを向けてから
資料室を出た…

どうにも…

うみのイルカの前だと
普段通りに出来ない
どこか、緊張する

それは、今始まった事ではなく…
もう随分昔から…
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