月光

□臆病なままのPierrot
1ページ/2ページ

「………」

アカデミーの教室…
無言の侭、どれだけ経過したのか…

「………」
「………」

今、隣に居る男に

何を告げれば、良いのか…

「………」
「………」

沈黙に耐えられなくなって、椅子から立ち上がる

隣の男は、眉一つ動かさない…

「……お先に」
「……えぇ」

短い挨拶…
胸が痛い…

本当に言いたかった言葉は、何だった?

不意に、振り向くと
目尻に指を運んでいる…

「………」

何度も何度も、諦めようとした…

彼を諦めて
良い友人になろうとした

今は、それすらも出来ない
ただ、見守るしか出来ない…

「………」

彼の心は、もう、知っている…

酔いが油断させたのか…
息苦しくて、吐き出したのか…

『サスケが…好きなんです』

そう、自分が告白する前に言われた…

言われて…
言えなくなった…

『そう、なんですか…』
『オカシイですよね…こんな、男同士で、好きとか』
『いや…良いんじゃないですか?
 …好き、ならさ』
『カカシさん…』
『そんな顔しないで、頑張らないと』

スラスラと、言葉が出て来て
自分を疑った…
俺は、何を言っている?
と…何度も…

「………」

受付でサスケを見ると
嬉しそうに微笑んで…
二人で飲みに言っても、サスケが中心だった…

「………」

それが…突然、空になる
サスケが里を出た…
力を得る為に
イルカを置いて

『…今なら』

その虚空に付け込むのも、簡単に出来る…
幻術でも何でも使えば
簡単に自分のモノに出来る

「………」

けれど…『心は?』

自分が何をしても
イルカの心には、サスケが居る

この人の中で、有り得ない程に大きな存在…

「…イルカ先生」
「…はい?」

慌てて指を引くと、無理矢理笑って見せる…

「忘れなよ」

耳を…疑った…

今、何を言った?

「…出来ません」

今にも泣きそうな声…

イルカは、幸せになれるのだろうか…
サスケと一緒に居れば…

『奪いたい…』

頭で思っていても
出来ない…

もう、どうしようもない位に
イルカが大切過ぎて…

「…イルカ先生」
「……」
「アイツは…」

言葉を…失った…

自分を見上げた侭、無言で…
泣き出してしまった…

こんなのは、駄目だ…
こんなの、卑怯だ…

そう…頭も心も解って居るのに…


「俺じゃ、駄目ですか」


告げた後…イルカが声を上げて泣き出してしまった…


〜Fin〜
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ