月光

□Prisoner Of Love
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身体中に溢れ返す

『どうして』

繰り返し、繰り返し…

考えれば考えるほど、出口が見えない

その上、吐き気までついてきた

「…どうして…」

震える唇からは
何度も繰り返す言葉

今、自分がどんな顔をして
どんな声なのか、さっぱり解らない…

「どうして…か」

目の前の男は
やや冷めた口調で答える

「まぁ、その反応が正しいんでしょうね…」
「…どうして…」
「あ〜無理して考えなくて良いですから
 俺の事とか無視しても良いし」
「…はたけ…上忍…どうして…」
「困らせるつもりじゃ無かったから
 すいません…イルカ先生」

誰も居ないアカデミーの教室
夕焼けが綺麗だなぁ…とか
明日は忍術の抜き打ちテストをしよう、とか

本当にそんな事ばかり考えていて

不意に顔を上げたら
目の前に、人が立っていた…

「ごめんね、気持ち悪いよね」

頭がついてこない…

「でも、ごめん…好きなんだ」

好きって何?

「イルカ先生を独占したい」

独占ってどう云う意味?

「愛してます」

どうして?

どうして、俺?

どうして、どうして…

「あ〜…すいません」

カカシを真っ直ぐ見上げた侭
身動きが出来なくなった

「…今日で嫌いになっても構いません
 俺は、イルカ先生を愛してる侭になるけど」

意味が解らないけれど
唇が、勝手に言葉を成した…

「今すぐは、応えられません」
「はい…」
「私に…時間を下さい…はたけ上忍」
「えぇ、俺からもお願いします」

そう言って、目の前から消えた…

音もなく…一瞬で…

「愛してる……
 愛って…なんだ…」

カカシが居た場所をジッと見つめた侭…
頭の中、身体の中から
沸き上がり
溢れ出す

「どうして…俺…なんだ…」

言葉にしてみると
ジワリ…と、涙が滲んだ…

悲しくも、苦しみも
辛さも無い…
ましてや、喜びでも無い…

ただ、涙が滲んで
ぽろぽろと零れた…
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