甘夢

□シークレットシークレット
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穏やかな微笑み
落ち着いた口調
誰からも愛される性格
人当たりも良い

誰に聞いても、良い評価しか返ってこない…

「………」

普通、少なくても何かしら悪く言われる
それは、自覚の無い内に
無意識に人を傷付けるから…

「………」

完璧に、完成された『良い人』なんて
この世には存在しないと思っていたし
居たとしても『馬鹿』だと思っていた。

「どうかしましたか?」
「…あ…いえ…」

提出した報告書を
俯いて見ていたのに、急に話し掛けられた…

「………(視線、消した筈なのにな」
「不備はありません、お疲れ様でした」
「あ…はい」
「…はたけ上忍、失礼します」

クイ…と、袖を握られた

「…あの…」
「血が…着いてます」
「ぇ…」

何処も負傷していない…
有るとすれば、返り血

そう言おうと、イルカを見ると
自分が怪我をしたみたいな…泣きそうな顔

「大事、無いですか…」
「大丈夫です、俺のじゃ無いから」

その声に安心したのか…
小さく『良かった』と呟いた

クルリと背中を向けて
居心地の悪さに頭を掻いた…
何となく、落ち着かない

イルカが気になって仕方ない

いや、気になったのは
今よりずっと前だった…

「……何だかなぁ」

チラリと受付を見遣れば
変わらず対応している…

「……(誰にでも、なんだよな」

別に自分じゃ無くても
さっきみたいにするんだろうな…と
考えながら眺めていた…

「……(軽傷者か」

僅かに、血の匂いがした…

「不備はありません、お疲れ様でした」

ふと…引っ掛かった…

自分よりも濃い血の匂いに
イルカが反応しなかった…

何も言わずに、業務を続けている…

『大事、無いですか…』

あれは…何だったのだろう…
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