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□ぼくのたからもの
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最初は痛みと気持ち悪さで吐きそうになったのですが、見かねた社長が気持ちよくなる薬を打ってくれたおかげでその後はただただ快楽に溺れていればいいだけでした。排泄器官に異物を入れられるのも乳首を擦られるのも脇腹を舐められるのも全てが快感に変わり、こんなことを言ったらあなたは怒るでしょうけれど麻薬に溺れる悪人の気持ちが少しわかったような気がしました。
「君の相方の賠償金のことは心配しなくていい」
やっぱりスポンサーの力って凄いんですね。僕のを美味しそうに舐めながら、社長はそう言ってくれました。
「これからも君に期待しているよ」
いや、“君たち”と言うべきか。
社長はそう言って密やかに笑い、その笑みを絶やさずに僕に命じました。

「さ、足を開こうか」


***


「どしたのバニーちゃん、」

トレーニングを終え、ロッカールームのベンチに腰かけていると、シャワーを浴び終えた彼が話しかけてきました。

「ぼーっとしてよ」

ごしごしとタオルで髪をふきながら、おじさんは僕の隣に座りました。

「あ、いえ…」
「ふう、今日も良い汗かいたわ。あービール飲みてえ。動いたあとのビールに勝るモンはねぇよな!冷蔵庫に買い置きあったかな…帰り買わねぇとな」
「虎徹さん、」
「ん?」
「元気ですね」
「は?」
「僕今日オーバーワーク気味だったんで少し疲れてしまっていたんですけど、それに比べて元気良いなぁって感心してしまって」
「それで綺麗好きのお前がすぐシャワーも浴びないでぼーっとしてたわけね。てかやっぱりわかっちゃう?俺さぁ、今日機嫌良いのよ」
「どうしたんです?」
「一ヶ月前くらいにごたごたしちまった賠償金の件あるだろ、ほら、ビルの銅像がどうたらの。あれスポンサーが話つけてくれてチャラになったって今日聞いてよ。いやー、おじさん無駄に筋トレ張り切っちゃった」
「…そうですか」
「なんだよ、嬉しそうじゃねぇなぁ」
「はは、ちゃんと嬉しいですよ。よかったじゃないですか」
「おうよ。情けねぇけどヒーロー続けられんのもスポンサー様のお陰ってか」

自嘲気味に少し笑って立ち上がると、彼は着替えに行ってしまいました。

貴方がそんなことを心配する必要は無いんですよ。
僕は彼の背中に向かって心の中で言いました。
僕を暗闇から救い出してくれたのは貴方だ。貴方は貴方のままでいてくれればいい、僕を照らし続けてくれる優しい貴方のままで、どうか、どうか。


***


「どうした?今日はえらく威勢が良いじゃないか」
奉仕する僕の髪を撫でて、社長は満足そうに言いました。
「…約束、守っていただけたのが嬉しくて」
「約束?ああ、賠償金の件か」
僕の両頬に手をあて、彼は言いました。
「健気だな。ますます気に入る」
唇をなぞる、皺の刻まれた指。それが輪郭、まぶた、鼻筋を撫で、もう一度下唇に戻ってくる。
「…美しい」
「ありがとうございます」その指に上から手を重ね、軽くキスをした。
「私はね、本当は君をヒーローになんかしておきたくは無いんだよ。こんなに美しい顔に痣が出来でもしたらと思うと素直に応援できない」
くつくつと彼は笑う。
「ご心配には及びません。敵の攻撃を食らうようなミスはしませんから」
言ってから、彼と私の台詞の滑稽さに笑ってしまいました。
だって私の体には、目立たないところに彼のつけた噛み傷や注射針の跡が色濃く残っていたのですから。

「今日も使うかい?」
「そうですね。でももう少し後が良い」
「珍しい。いつもすぐに欲しがる君が」
「限界までいじめてみたくなったんです。自分を」
「私のやっていることがそんなに苦痛だと?」
「はは、ご冗談を」
ご褒美だと思っていますよ、心の底から。

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