〜光と影の鎮魂歌〜

□【第九話】
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「・・・な・・・に・・・?」
「・・・・・・」
「南野・・・秀一・・・だって・・・?」
「・・・・・・。」

幽助の言葉が、途切れ途切れにしかならない。
何か言おうとしても、次の言葉が見付からない様だった。

「ばっ・・・馬鹿言ってんじゃねぇよ!
南野秀一ってのは、蔵馬の人間界での名前だろーが!!」

呆然とした表情の幽助に代わって桑原が叫んだ。

「そ・・・それに蔵馬ならあそこに・・・!!」


──桑原の指差す方には、確かに蔵馬がいる。
意識こそ失ってはいるものの、それが幻影の類だとは到底思えない。
それに、先程シュウが体を張って守ろうとしたのだ。
あの蔵馬が幻ならば、そんな事をする必要もない。



「フッ・・・」

腕を組み、口元に笑みを浮かべて余裕の表情を見せる駕月に、3人は眉を顰めた。

「・・・その通り。
あそこにいるのは紛れも無く蔵馬だ。間違い無く、な」
「・・・どういう事だ。あの蔵馬が幻じゃねぇなら、シュウが南野秀一なワケがねェだろ!」
「・・・・・・」

余裕の笑みはそのままに、駕月はシュウの姿をチラリと横目見た。
その視線に気が付いたのか、小さく肩を震わせて、シュウは駕月から目を逸らす。

「・・・シュウ・・・?」
「・・・・・・」
「──秀一。そろそろこいつらに話してやったらどうだ・・・?遅かれ早かれ、いずれは分かる事だろう・・・?」
「・・・・・・」
「・・・何も語らないつもりか?」
「・・・・・・」
「・・・いいだろう。貴様。浦飯・・・と、言ったか?」
「・・・?」

名前を訊ねられて、幽助は微かに眉間に皺を寄せた。

「オレから説明してやるよ。
秀一──いや、『シュウ』の秘密を、な──。」











「・・・まさか。コ・・・コエンマ様・・・」
「・・・そんな事って・・・」
「・・・信じられん。信じられんが・・・『シュウ』が『南野秀一』だと言う、駕月の言葉が本当ならば、そうとしか考えられんのだ・・・」
「で、でも・・・っ」
「それでは・・・あの少年は・・・」
「・・・これが・・・"魔鏡"の力・・・だと言うのか──・・・?」












「──そこにいる人間の小僧と蔵馬──・・・

奴らは、『同一人物』なのさ」

俯いたままのシュウに代わって、駕月が口を開いた。

「・・・同一人物・・・だと・・・?」

先程よりも、警戒心が解けたらしい幽助は、構えていた拳を下ろして駕月の言葉に反応を見せる。
それは、飛影や桑原も同じだった。


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