お題

□ただ、色鮮やかに
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「もう・・・・」

「ん?」

急にこちらを向いたその目は、心配の色で濡れていた。
優しく微笑めば、安心したのか唇がゆっくり言葉を紡ぐ。

「もう、傷は痛くないのか・・・?」

そういって優しく俺の胸を触る。
その肉や骨の下には、心の蔵がある。
今も規則正しく脈打つそれを覆う肉を、しなやかな指が撫でる。

「傷って・・・どれくらい前だと思ってんの?」

そう言えば「そうだったな。」と笑う君。
でも、どこか痛そうだった。
俺なんかより、もっと痛い傷を負ったのに。

「お前は・・・?」

「消えたよ・・・。」

腰を撫でてやれば、くすぐったそうに身を捩る。

笑って


ほろり


涙が一筋


その白い頬を流れた




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