お題
□ただ、色鮮やかに
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青い空に、散る桜の花びらが眩しい。
気持ちがよくて、両手を上に上げて伸びる。
「良い天気だな。」
誰に言うわけでもなく、口から出た言葉は、風に乗って花びらと一緒に消えていった。
風に遊ぶ、自分の銀髪を直しながら目を細める。
体中を循環する空気によって、体の中が春一色になる。
「こんな所にいたのか。」
ため息と一緒に、耳を優しく擽る声が俺を呼ぶ。
振り返れば、困ったように笑う君。
昔見たあの顔と寸分も変わらない顔。
「気持ちいいんだもん。ここ。」
座れば?と誘えば、しかたないと言って横にチョコンと座る。
相変わらず素直じゃないね。
そんなところが大好きなんだけど。
横顔を見れば、ただ真っ直ぐ前を見ている。
耳は、ほんの少し桜色に染まっている。
懐かしい。
愛おしい。
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