お題
□実る季節に
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フワフワと花びらが散っていく。
薄紅の花びらが、風と共に薄い青空を舞い上がる。
桜吹雪のなか、坂田銀八は1人の少年を見つけた。
上までかっちりと釦を留めた黒い学ラン。
風になびくその美しい漆黒の髪が、光に当たってさらさらとなびく。
「体育館はどこですか?」
まだ若い声が、不安そうに銀八に問うた。
髪と同じ色の漆黒の瞳に、自分の銀髪が浮かび上がっている事になぜだか嬉しくなる。
光を蓄えてゆらゆらと揺れる黒が、とても美しいと思った。
学ランの左胸を見れば、白い造花が咲いており、彼が新入生だとわかる。
「今から俺も行くとこだからさ。俺と一緒に行こう。」
ね?
優しく言えば、少年は子供扱いされたと思ったのか下唇を噛み締め少し頬を染めて頷いた。
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