□ Dream
□記憶
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いつも好きなときにふらりとあたしの部屋にやってきて、あたしの作ったご飯を一緒に食べるようになって、なんとなく一緒に過ごす時間。
彼の気まぐれだった“勝手”が、いつの間にか“いつも通り”になっていた。
この奇妙な関係を、なんと言えばいいのだろう。
「あたし、バクラと付き合う気なんかないよ」
ベッドの中、あたしの隣でダルそうに目を閉じているバクラを見ていたら、出てきた言葉。
「ああ?…ンなもんオレだってねーよ」
「じゃあどうしてここに来るのよ。この部屋に」
「…さぁな‥」
ハタから見れば、あたし達は恋人に見えるのかも知れない。恋人と呼べるようなことをしているのかも知れない。
でも恋人になるのには、きっとあたしは彼のことを知りすぎてしまった。千年アイテムのことも、彼がこの時代の人間じゃないことも。
「いきなり‥なのは毎度のことだがよ。どうした」
「なんか急に、ね。いつかはいなくなっちゃうんだろうなーと思って」
「あー…そうだな」
バクラの表情からは、感情が読み取れない。
でも平気。突然始まった関係だもの、終わるのだって突然だわ。そしてあたしはこの自分勝手なバクラが現れる前の生活に戻るの。
「オレが消えたら、お前はどうなる?」
「どうもしないよ。あなたのことを忘れるだけ」
「ハッ…お前らしいな」
だから居心地がいいんだけどよ、とバクラは呟くように言った。
この部屋にバクラが来なくなった日。ああ、あなたは過去に戻って行ったんだねってちゃんと思えるように。
あなたがいなきゃ生きていけない、なんて思っちゃいけない。
でもね、やっぱり
「あたしはバクラのことが好き」
だから今は精一杯、あなたを感じさせてね。
あなたがこの世界から消えてしまう、その日まで。
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