日記帳
□【○月○日〜馬に乗れた日〜】
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晩御飯が済んだ後。
俺は湯浴みに行く途中居間からの声を聞いてた。
勿論、偶然だ!盗み聞きするつもりじゃなかった!
「ねー、剣心!」
薫のでかい声に驚いて襖を小さく開いた。
見えたのは何か考えてる剣心。
「剣心、どうしたの?」
薫が剣心に問う。
「うん?薫殿。考えてみたら、弥彦はまだ子供。もっとしたいこともあるでござろうと考えていたでござるよ。」
二人の時間に俺の話題が出た事に驚いた。
「そうね。弥彦もまだ我が儘言いたい歳よね。」
薫が裁縫していた手を止めて言う。
黙ったまま何か考えてる様子の剣心。
「剣心?何か良い方法ありそう?」
そんな剣心に薫が声を掛ける。
「そうでござるなぁ。」
まだ何か考えてる剣心。
「やっぱり、無理よね…。」
「・・・。」
まだ何か考えてる剣心。
「剣心、もう遅いわ。寝ましょ。弥彦には明日、私が言っておくわ。ね?剣心。」
剣心の表情を見て薫が言った。
「待って薫殿、明日少し心当たりを調べて来るでござるよ。」
ぽつりと剣心が言った。
「えっ!本当?剣心!?心当たりがあるの?」
剣心に掴み掛って言う薫。
「おろぉ〜薫殿、くっ、苦しいでごぉざぁるぅ〜。」
薫の手の中で剣心が延びかけていた。
「剣心、ごめんなさい!大丈夫?嬉しくて、つい…。」
「だけど、まだ調べてからでござるよ。弥彦には内緒でござるよ。薫殿。」
嬉しかった。
馬に乗れるかもしれないのも。
剣心が俺の為に色々考えてくれた事も。
薫が自分の事みたいに喜んでくれた事も。
ただ、二人が俺の事を想って考えてくれるのが…照れ臭くて…嬉しかった。
だから、その事についてはそれ以上は二人に言うのは止めた。
馬に乗れても乗れなくても…。
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