日記帳

□【○月○日〜馬に乗れた日〜】
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『馬』


「なぁ、薫〜。」

良く晴れた日の稽古前、俺は薫にある事をお願いしていた。

「無理よ。だって知り合いにもいないもの。」

やっぱり予想していた薫の答え。

「そうだよなぁ。でも、薫…。」

分かっているけど諦めきれない。

(だってずっと思っていたんだ…。ずっと憧れてきたんだ。)

「どうしたでござる?薫殿、弥彦。」

突然の剣心の登場。

間が良いのか、悪いのか…。

「・・・。」

黙り込む俺。

代わりに薫が答える。

「弥彦がね、馬に乗ってみたいんですって。だけど、知り合いにも馬を飼ってる人なんていないし…。」

呆れた薫の声にむかつく反面、悲しくなる。

「馬でござるかぁ。弥彦、何故突然馬でござるか?」

剣心にとっては当たり前の俺にとってはとてつもなく答え難い〔こたえにくい〕質問。

「・・・。」

(言えねぇよ。)

黙ったままの俺。

「弥彦?」

優しく剣心が問掛ける。

「弥彦?」

何だか心配するような薫の声。

「突然じゃないんだ…。ずっと思ってたんだ。」

それは本当の事。

「いつから?」

珍しく薫が優しく問う。

「……いつだったか、剣心が馬を乗りこなした時…。かっこいいって思ったんだよ…。…ずっと思ってたんだ…。」

恥ずかしくってうつ向いたまま答えた。

「そうでござったか。でも、拙者はかっこよくなんかござらぬよ。弥彦。」

ふぅと優しく頷く剣心。

「でも、俺にはそう見えたんだ。それに、馬に乗れる様になるのは悪い事じゃねぇだろ?なぁ?剣心?」

「そうではござるが…。」

剣心が肯定の返事をくれたけど、解決法は直ぐには出てこない。

馬なんて買うお金、勿論無いのは分かってる。

だけど興味が沸いたら我慢が出来る程、俺は大人じねぇ。

「それに弥彦。簡単には乗りこなせないわよ。剣心は運動神経がいいんだから。」

薫が俺をなだめるように言う。

薫の言葉は分かる。

「そんな事は無いでござるが難しいのは本当でござるよ、弥彦。」

謙遜しながらも俺を試す様に剣心が言う。

「わかってるよ。だから練習するんだろ?」

そう、分かってる。

だけど!

剣心が馬を乗りこなしていてかっこ良かったんだ。

俺も剣心みたいになりたいんだ!!

二人を困らせたい訳でも無い。

理解出来なくも無い。

けど。

たまには…。

だめかな?

やっぱ、我が儘かなぁ?








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