貴方を見た瞬間、私の身体を駆け巡ったあの痺れは何だったのだろう。





「……おい」

『………』

「聞こえてねえのか??」

『聞こえてるわよ。何??』

「いや、ボーッと突っ立ってるからさ。ホントに、ボケちまったのかと思った」

『馬鹿じゃないの。全く…誰のせいで…』

「あ??」

『何でもない』


自分でも、信じられない。
どうして選りにも選って、こんな野生児なんかに恋心を抱いてしまったのか。
…太陽の翼だから??
一万二千年前の恋人だった太陽の翼――アポロニアス。
セリアンが最も愛した人。
それは禁断の恋だったけれど、誰よりも熱く変わらない愛だった。
と言うのも過去生≠ナ知っているだけなのだが。
過去生に影響されているのかしら??
それじゃあ、まるで他人の意思を受け継いでるだけみたいで。
私自身の意思では無いように思えてきて、腹が立つ。


「…なぁ、やっぱお前可笑しいぞ??」

『何が??』

「何、怒ってるんだよ」

『怒ってなんかない』

「その言い方が怒ってるだろ」

『煩いわね!!本人が云ってるんだからそれで良いでしょ??ほっといてよ!!』

「ほっとける訳ねえだろ!!」

『何でよ!!』

「………」

『…理由も無しに首突っ込まないでよね』

「――…から」

『え??』

「好きだから」


瞬間、心臓がドキリと跳ねた気がした。
その後も心臓は不規則運動を止めぬ儘、シルヴィアの思考を掻き乱した。


『好き…だったら…何なのよ…』

「好きな人を心配するのは当たり前だろ」

『私はアンタなんか…』

「嫌いでも良い。でもせめて、心配くらいさせてくれても良いだろ??」


あぁ。そうなんだ。
私は思った以上に貴方に惚れてしまっている。
そんな哀しい顔をさせたくは無かったのに。
私はいつの間にか貴方を傷付けてしまっていた。
知らず唇を噛み締めるシルヴィアを視て、アポロは自らに引寄せた。


『――…っ?!何す…』

「御免。これだけ云ったら離すから」

『……??』

「俺の前では弱くなっても良いからな」

『何…云ってるの??』

「お前さぁ、人前じゃ強気だろ??でも俺にはそれが凄え苦しそうに見える。だから俺になら甘えられねえかな??」


知らなかった。
私は自分でも気付かない内に気を張っているの??
それを、アポロは見抜いていた。


『アポロには…隠し事出来ないね』

「そんくらいしか出来ること無いしな」

『…仕方ないから云うこと聞いてあげるわ。その代わり』

「その代わり??」

『私から離れちゃ駄目だからね』


アポロは答える代わりにシルヴィアをキツくキツく抱き締めた。
アポロの腕はシルヴィアの力を奪うと共に、思考までも蕩けさせた。
何も考えられなくなった脳と動けなくなった身体で必死にアポロに抱き着いた。
二人はお互いに離れないように何時までも抱き締め合っていたが、不意にアポロが口を開いた。


「シルヴィア…」

『ん??』

「好きだ」

『好きなだけ??』

「…愛してる」

『じゃあ、キスして』

「はあ!?キスなんかしたことねえよっ」

『私も無いわよ。簡単じゃない。唇重ねるだけよ??』

「…じゃあ!!眼絶対閉じてろよ!!」


シルヴィアは何の躊躇いも無く眼を閉じた。
アポロは少し身体を離すとシルヴィアの顔にそっと触れる。
シルヴィアは少し顔をしかめたが、それでもじっと動かなかった。


「ホントに良いんだよな??」

『早くしてよ』

「…どうなっても知んねえからな」


アポロは勢いに任せてシルヴィアの唇に自分のを重ねた。
心音がシルヴィアに聞こえるんじゃないかと思う程煩く鳴っている。
それでも初めてのキスは離したくなくて。
シルヴィアのそれは柔らかく温かかった。
時間が経てば経つだけ大きくなる心音に堪らなくなって、アポロは唇を離した。


『嫌がってたクセに随分長かったね』

「な…うるせーな!!」

『顔真っ赤』

「余計な世話だ!!つーか、何でお前平気なんだよ」

『……平気じゃないよ。凄い心臓ドキドキしてる。聞いてみたら??』

「え…」


シルヴィアはアポロの顔を自分の胸に押し付けた。


『聞こえる??』

「…あぁ」

『全然平気じゃないでしょう??私』

「…俺も」

『あのさ、アポロ。私ね』

「ん??」

『アポロが大好き』





あの痺れは、多分愛≠ニ云う名の甘美な想い。






2008.06.02.


リニューアルしてから初めて書いたアポシルです。
やたら長く且つ文脈が成ってない。
いやでもアポシルはホントに最高だと思います。
萌です、ツンデレ最高。
最後まで読んで頂き、有難う御座いました。

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