今までは大嫌いだった。
今からは…――。








「お前から仕掛けて来たんだろ!!ったく、二度と俺の前に現れんなこのボケ!!」

『こっちから願い下げよ、馬鹿!!あんたなんか大っっ嫌いなんだから!!』


そう言い残して私は自分の部屋まで走っていった。
本当にムカつく男だ。
途中で麗花やピエールに声を掛けられたけど無視した。
それくらいムカつく。


バタン!!


荒々しく扉を閉める。
閉めてその後。
何故かその場に座り込んでしまった。
はぁー…、と長い溜め息を吐いて。


『……ちょっとぶつかっただけじゃない…』


私は、悪くないでしょ??


『…何で…』


あいつは私に冷たいんだろう。
私そんなに悪いことしてないじゃない。
それなのに。
何で。
どうして。
私だけ。


『何っ…でよ…!!』


ぽたり
ポタッぽたりぽたりポタッ


涙が、出た。
流れてくる意味も分からない。
分からないことが多すぎて壊れてしまいそうだった。
いっそのこと本当に壊れてしまえたら良かったのに。
声もなく。
涙が落ちる音だけが部屋中に響いた。
どれくらい泣いただろう。
電気も点けずに既に真っ暗になった部屋で一人佇んでいた。
目が腫れて痛い。
水溜まりが出来そうな程の涙は床を濡らした。
ご飯も食べずに部屋に籠っていたから皆が心配して来てくれたけどこんな顔は視られたくなかったから。
お腹痛いから、って少し悪いなって思ったけど帰ってもらった。
と、部屋の前で誰かが立ち止まった気配がした。
今度は誰だろ。


「シルヴィア」


扉越しに聞こえた声。
聞き覚えのある声。
この声は。
あいつの。


「居るんだろ??」


アポロ、の。


「…返事しないならしないで良いけどよ」


また涙が出た。
意味分かんない。
自分で自分を抑えられない感じ。


「あの、さ…取り敢えず悪かった」


誰が許すもんか、馬鹿。


心の中で返事をした。
声にしたら泣き声になりそうだったから。


「俺、二度と現れんなって云っただろ??」


覚えてない。


「…御免、な」


……何で、そんなこと。


「云った後に思ったんだよな…お前が居なかったら調子狂うような気がする」


何、それ。


「…俺多分お前が好きだ」


………は??


涙が、止まった。
私は完全に頭の回路が遮断された状態になった。
頭の中の配線をぐちゃぐちゃにされた感じだ。


「あー…やっぱ良いや。やめる。忘れろ」

『…待っ…待ってよ!!』


あー、何かもう。


気が付いたらドアノブに手を掛けていた自分。
私はぐしゃぐしゃになった顔で。


『……あんたのこと…アポロのこと嫌いとか云ったんだけど…』


たった今見付けた答えを貴方に教えてあげる。


『好き、だよ』


認めたくなかった答え。
目を見開くアポロ。
少しして普段のどこか落ち着いた様な瞳をして。
私の名を呼んだ。
アポロは私に近寄ると。
手を伸ばして。
抱き締めて。
耳元で。


大好きだ、って。


その言葉は魔法のように。
私の力を奪った。
ぎゅうと彼の胸に顔を埋めた。
懐かしい、匂い。


『アポロの匂い…好きだったな…』

「一万二千年前のことか」

『うん』

「…はっきり言い切れねえけどさ、俺も多分好き、だったんじゃねえかな…」

『そうだと…良いけど』


何だか嬉しくなってもっと顔を擦り付けた。
上からアポロの笑った様な声が聴こえてきた。


「お前とこんなことしてるって何か嘘みてえ」

『……私も。あんたに抱き締められるなんて夢にも思ってなかった』


ほんと、夢みたい。


「…これで少しは喧嘩売らなくなるよな」

『なっ…云われなくても売らないわよ!!って言うか売ってない!!』


私は思いっ切り腹を殴ってやった。







彼は「痛えんだよ馬鹿力」って叫んだけどその顔は。


笑って、いた。








2008.08.14.

更新遅れ気味で御免なさい(泣)
ツンデレ-な話が描きたかったです。
何か僕の話のですね、アポロ君は性格違っちゃってる気がして心配なんですが。
最後まで読んで頂き、誠に恐縮であります。

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