私の初恋の人は馬鹿みたいに私を愛してくれた。






廊下を歩いていたらあいつの声が聞こえた。


「シルヴィア」


今日もあいつが笑いかけてくる。
何が楽しいんだか私の前ではずーっと笑ってる。
だから私もつい笑っちゃうんだけど。


「何笑ってんだよ」

『別に』


あんたが原因なんです。


『で、何か用』

「あぁ。さっき外で林檎見つけたんだ。一緒に食おうぜ」

『…うん』


アポロは持っていた林檎を取り出すと素手で半分に割った。
何て馬鹿力…って人に云えないかな…。


「ん」

『ありがと』


アポロが林檎にかじりついたのを見て、私も取り敢えず一口かじってみる。
甘酸っぱい林檎が口の中で弾けた。


『美味しい…』

「良かった」


アポロは本当に嬉しそうな顔を私に向ける。
そんな顔されたら笑うしかないじゃない。
…この所私が笑う原因の八割はこいつのせいだ。
それにしてもこんなに美味しい林檎は初めてだった。
何処に生っていたんだろ。


「シルヴィアの匂いって果物っぽいのかもな」


と、林檎を食べ終わったアポロが唐突に口を開いた。


『いきなり何??』

「林檎見てたら思った。間違ってるか??」

『自分の匂いなんて分からないわよ』

「あー、云われてみればそうかもな」

『云われなくてもそうよ』


会話が終わるのとほぼ同時にシルヴィアも林檎を食べ終える。


『痒…』


目が痒い。
塵でも入ったのかしら??


「どうかしたか??」

『目…何か入ったかも…』

「……見てやるよ」

『え…??』


誰も良いよなんて云っていないのにアポロは私の目をじいっと覗き込んできた。


『ちょっ…』

「じっとしとけよ。動いたら見れないだろ」


アポロは近くの壁にシルヴィアを押し付けるといやと言う程顔を近づけてきた。
本人は何とも思っていないのだろうが私にしてみればこれ以上無いくらいに恥ずかしかった。
つい目を瞑ってしまう。


「あーもう何だよ」

『何でもない…!!』

「じゃあ目開けろよ」

『…嫌』

「は??痒いんだろ??」

『もう痒くないから…早く放してよ!!』

「何怒ってんだよ??訳分かんねー女だな」


シルヴィアはアポロから解放されるとその場に座り込んで大きく溜め息を吐く。


「??お前顔赤いぞ」

『――…でしょ』

「あ??」

『あんたのせいでしょ!!』

「…俺何かしたか??」


アポロは心底不思議そうな顔をシルヴィアに向ける。
と、シルヴィアの中で沸々と怒りが込み上げてきた。


『もう!!何で私だけこんなに恥ずかしくならなきゃなんないのよ!!ほんと、全部あんたのせいだからね!!』


勢い任せに叫んだけれど我に返った瞬間、更に恥ずかしさが増してシルヴィアは走り出す。
が、アポロに力一杯手首を掴まれて逃げるどころではなかった。


『痛…!!放して…』

「お前そんなに俺のこと嫌いかよ」

『違っ…!!違う…』

「じゃあ」


と、一呼吸置いて。


「逃げることないだろ。俺お前の色んな顔視たいし…つーか、お前のこと好きだからさ」


胸が、くすぐったい。
アポロの顔は真っ赤で。
きっと私よりずっと赤くなってる。


「俺だって恥ずかしくなるんだからさ…うん、別に逃げることねーよ」

『……わ、分かったから…手痛い…』


その言葉にはっとしたアポロは慌てて手を放した。
シルヴィアの手首にはくっきりとアポロの指の形が残っている。


「悪い…その痛くないか??」

『良いよ別に…』


それでも申し訳なさそうな顔をしているアポロを視て、シルヴィアは悪戯っぽい笑みを浮かべた。


『それじゃあね』


え??、とアポロが顔を上げるとシルヴィアは。


『また林檎取ってきて』

「取ってきて??」

『食べさせてくれたら許してあげる』







2008.07.21.

更新遅くてご免なさい。
最近漫画描き始めました。
勿論アクエリの同人ですが。
もっと上手く描けるように精進したいです。
その前に文章書くのも上達したいっす。
何か良い上達法って知りませんか??
もしそう言うの知っている方がいらっしゃったら教えて下さーい。

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