敵である彼にこんなにも強く惹かれてしまう私はどうすれば良い??
…ねえ、教えてよ。








彼のことが頭から離れなくて。
いけないことだと言うのは分かっている。
分かっている筈なのに好きで好きすぎて堪らない。
……会いたい。
今すぐ彼に会いたい。
心の中で名前を呼んだ。
こんなことしたってそう都合良く現れてくる訳も無いのに。
何度も何度も強く願った。


『来る訳無いわよね…』

「呼んだか??」

『え…!?』


振り返れば其処に居たのは彼。


『アポロ…ニアス…』

「まさか君がそこまで私を想っていてくれているとはな」

『なっ…!!誰のせいだと思ってるのよ!!』

「まぁそう怒るな。折角の顔が台無しになるぞ」


うぅ…本当に口達者な男なんだから…。


「…セリアン」

『何??』

「君は本当に私が好きか??」

『何故そんなこと…』

「答えてくれ」


こんなに真剣な顔をしたアポロニアスは初めてだった。
答えは当に出ているのだけれどそれを伝えるのはどうも気恥ずかしいところがある。
しかしこの雰囲気は答えぬ訳にもいかなそうだ。
……何時までもうじうじしていられないか。


『愚問ね。嫌いならこうして話などしないわ』

「…ならばもう少し甘えてきて欲しいものだ」


糞真面目な顔をして何を言い出すんだこいつ。


「君は少し冷たすぎるぞ」

『そんなこと云われても…』


何分戦士として生きているセリアンにとっては他人に、況してや男に甘えるなど程遠い話だった。
戦場では皆独りなのだ。
他人を頼りにしていたら生きてはいけないのだから。


『甘え方なんか知らないもの』

「無理に甘えようとして欲しい訳では無い。ただ…」

『ただ??』

「たまには君から抱き着いて来てくれても良いなと思ったんだよ」

『…要するに私に何かして欲しいの??』

「まぁ、そうなるのか」


何故そんなことを簡単に云ってのけるのか。
でも確かに私から彼に何かをしたことは無い。
抱き締められるのもそうだけどキスだっていつもアポロニアスから。
別段私は何とも思っていなかったのだけどやっぱり相手はして欲しいのだろうか??
恋愛経験が皆無に等しいとこうも疎くなるものか。
…分からないな……。


『う〜ん…』


あからさまに悩む表情を浮かべているセリアンを視て不意に笑みが溢れた。


『何笑ってるのよ』

「いや。君がそんなに悩んでくれるとは思っていなかったから…嬉しいよ」


どきり


いつもこうだ。
アポロニアスの笑顔に心臓が跳ねる。
何度視ても彼の笑顔にはつい惹かれてしまう。


『――…らね』

「何か云ったか??」

『一度だけだからね!!』


セリアンは自分より幾分大きいアポロニアスに抱き着いた。
アポロニアスはセリアンの余りの勢いによろめくが優しく彼女を抱き止めた。


「…セリアン」


セリアンは答えない。
ただじっとアポロニアスの胸に顔を埋めた壗で。


「セリアン。顔を上げてくれ」

『……嫌』

「君の顔が視たい」

『私は視せたくないの!!』

「恥ずかしがらなくても良い」

『恥ずかしくなんかないわよ!!』

「頼む」


耳元で低く囁くとびくりとセリアンの肩が揺れる。
それっきり動かなくなってしまってアポロニアスはセリアンの顔に手を添える。
セリアンは抵抗せず俯き加減にだが顔を上げた。


「可愛いじゃないか」

『二度としないわ』

「…キスしても良いか??」

『嫌だと云っても貴方はするでしょう』

「良く分かっているな」


アポロニアスはセリアンの顔を覗き込む。
セリアンはアポロニアスと視線を合わせるとゆっくりと瞳を伏せた。


『早く…して??』

「我儘な女だな」


彼の唇が私の唇に触れる。
ただそれだけのことなのに嬉しくて。
ずっと離したくなくて。


『んっ…』


アポロニアスの舌がセリアンの口内に入り込み蠢く。
セリアンは上手く呼吸が出来なくてアポロニアスの腕の中に崩れ落ちた。
二人の間で小さく鳴る水音がやけに大きく聞こえる気がした。


((も…これ以上は…))


意識が白くなりかけた寸前唇が解放される。
同時にとてつもない速さで身体中で酸素が巡った。


『はぁ…はぁ…』

「これだけで息が上がったのか??…君は耳とキスに弱いみたいだな」

『…それだけじゃないわ』

「では何だ??」

『秘密』


だって恥ずかしくて云えないもの。







アポロニアス≠セなんて。








2008.07.25.

はぁ〜終わりました。
初の ニアス×セリアン です!!
言葉遣いが合っているかどうか…。
大目に見てやって下さい。
たまには良いですね…一万二千年前も…(笑)

エマさんのリクでしたvV

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