『ちょっ…と…』


気がつけば、そいつの身体は私の上に覆い被さっていた。


((何よ…何なの!?何で私こいつの良い様にされてるのよ…!!))


抵抗したいのに。
したい筈なのに。
身体が言うことを聞いてくれない。
何時もの怪力も出ない。
嫌な奴なのに。
そんな眼で私を視ないで。


「――…なんだよ」

『え??』

「好きなんだよ…!!お前の事が好きで好きで仕方ねぇんだよ…!!」

『……う、そ…』

「…嘘じゃない」


信じられない。
煩い煩い…!!
こんなにも心臓がざわめくのは初めて。
私は偏にこいつに恋しているらしい。
信じられない。
あんなにも嫌いだった筈なのに。


「信じらんねぇ??」

『当たり前でしょう…!?だって……ん!?』


今私の口に触れているモノが何なのか。
視てはいてもその現実に脳が着いていけない。


「信じれたか??」

『分かんない…分かんないよっ…!!私はだって…あんたの事…』

「嫌い??」

『そ、そうよ!!』

「…ホントに??」

『え…??』

「ホントに嫌い??」


あ…――


言葉が出ない。
『嫌い』なんて云えない。
だって口からの言葉は全部出任せなんだから。
素直になれないから本音とは真逆の言葉が口を紡ぐ。
好き≠セなんて認めたくない。
認めたら私はそのまま貴方に堕ちてしまう気がする。
ううん、絶対に。
私はそこから這い上がれなくなってしまうから。


「…シルヴィアが嫌いでも俺は好きになっちまったんだ。御免な」


今まで乗っていた身体が無くなった。
私はそれが酷く哀しい事だと思った。


「うわっ…!?」


だから直ぐにその離れた身体をまた私に乗らせた。


「…っ!?シルヴィア??」

『馬鹿じゃない…』

「はぁ??何がだよ」

『嫌い≠セなんて嘘に決まってるじゃない!!私の方が……あんたの事好きなんだから!!』


云っちゃった…。
どうせならこの世から消えてしまいたい。
そしたらこんなに惨めで恥ずかしい思いしなくて済むのに。
なんて思った。
やっとシルヴィアの言葉の意味を把握したのか、アポロは満面に喜色を湛えた。


「夢…じゃないよな」

『出来うる事ならそうなって欲しいわ、私は』


穴が有ったら入りたい。
とは昔の人もよく言ったモノだ。


「悪い、もっかいキスさせて」

『ヤだ』

「…拒否権無しな」


初めから私もそのつもりだけどね。
さっきとはまた違う優しさが唇と共に伝わった。
その甘露は私の身体を巡り、脳を蕩かせた。


『ん…もっと…』


どうせなら本当に蕩かせてほしい。
頭も身体も全て。
もっともっと優しく甘く深いキスで。
我儘かな??
でも欲張るのも必要でしょう??
貴方のその優しい唇で私の全てを奪ってみて??


「ホント…我儘な女…」


フッと笑ってアポロの舌が私の中に入ってきた。
上手く息が出来ない。
けどそんなの関係ない。
シルヴィアも必死に舌を絡めるのだけれど、どうも不器用で。
アポロはそれに較べてやたらと器用だから、余計に疲れる。
名残惜しく引かれる銀糸はこの場の何より輝いて見えた。


『はあっ…ぁ…』

「はっ…頑張り過ぎ…」

『う、煩い!!』

「まぁその方が嬉しいか」


アポロはシルヴィアの髪を撫でると額にキスを落とした。


「今日からは俺の大事なお姫様だからな」


――…大事にしないとな


笑いながらそう云うこいつが憎くて、とてつもなく愛おしかった。






2008.06.15.

なんて酷いお話でしょう;
やっぱ消そうかな…(泣)
思い付いた儘ノリで執筆してみたらこのような結果になりやした。
…ノリで書くのは良くないですね。
皆さん真似しないように。(何様だ)
じゃないと、こんな駄目人間になってしまいますよ。

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