頼むから俺だけを視てくれなんて我儘か??
『………』
「………」
折角の休みだと言うのに私達二人は何の会話もしていない。
((いざ休みとなると逆にどうすれば良いか分からないわ…))
椅子に座り本を開いてはいるが、彼女の頭の中にその内容は入っていない。
こうして10分は経っているだろうか。
アポロがシルヴィアの部屋に来てから。
「…なぁー」
ふとアポロが口を開いた。
勝手に部屋に上がり込んで勝手に布団に寝転がっていたのだが。
『な、何??』
どうしてだろう。
何故だか心臓が落ち着かない。
「シルヴィアはさ、俺とシリウスならどっちが大事なんだ??」
『え…!?どっちって云われても…そんなの…』
シルヴィアにとっては究極の二択問題だった。
唯一無二の血を分けた兄と好きで好きで仕方がない恋人と。
((そんなの選べる訳無いじゃない…))
本当に??
この質問をされた時真っ先に浮かんだ答えはどっちだった??
――…浮かんでしまったのはあの人だった。
それだけは確かなこと。
『…選ぶことは私には出来ない。でも真っ先に浮かんだのは………アポロだった』
「そっ…か…」
『あ、のその…御免ね??何か中途半端で…』
「いや…俺も悪かった。ちょっとどうかしてた………けど…有難う」
『え??』
「俺を浮かべてくれて」
と、みるみるシルヴィアの顔は赤くなっていった。
「何照れてんだよ」
アポロは笑うとシルヴィアの元へ歩み寄った。
『視、視ないでよ!!』
本で顔を隠すシルヴィアの仕草は可愛くて。
俺はこんな可愛くて仕方がない女に好かれてホントに幸せだなぁ、なんて。
思ったんだ。
「何だよ隠すなって」
『知らないわよ、馬鹿!!』
「隠すな。折角の可愛い顔が拝めねぇだろ」
心臓が大きく一跳ねしてシルヴィアの身体の力は抜け切った。
バサッと音を立てて本が落ちる。
露になったシルヴィアの顔は先程とは比べ物にならない位に赤く染まっていた。
それこそ真っ赤に熟れた林檎みたいに。
今にも泣き出しそうな倒れてしまいそうな危なげな少女は小さく『馬鹿』と呟いた。
アポロはこんなに照れたシルヴィアを視たことが無く、いつもは強気な彼女にも可愛い所があるのだなと改めて思い知らされた。
「…怒ってる??」
『当然よ、馬鹿!!絶対許さないんだか…っ!!』
気が付けばアポロの身体と私の身体の距離は零になっていた。
いっそ意識が遠退けば楽なのにと思ったが、そう言う時に限って事は思う様に進んでくれない。
「これで許してくれねぇ??」
『…これだけじゃ許してあげない』
「……他には??」
『……キ…ス…して…』
キス≠ネんてたった二文字の言葉を口にするのが恥ずかしくて堪らなかった。
「…了解。お姫様」
唇を重ねるだけのこの行為が私は堪らなく大好きだった。
勿論アポロ限定でね。
ちゅ
何かくすぐったい感じを抱かせるリップ音を聞いた。
((あ…もう離された…))
心の中で喪失感≠ニ言う風が吹き抜けた。
『馬鹿…足りないわよ。もっとして』
「我儘だな、シルヴィ-はさ」
『煩い、馬ー鹿』
二人は笑いを溢すとどちらともなく口付けた。
さっきと同じ様に軽いキスをされ一度口を離される。
私が酸素を充分に補給したのを見計らってアポロは荒々しく優しく深く口付けてくれた。
不意に口内に滑り気を持った何かが侵入して来る。
と言ってもこの状況で口内に入って来れるモノはアポロの舌しか無いのだけれど。
アポロの舌使いは驚く程器用で私は何時も倒れ掛けそうになるのをアポロに抱き止められる。
私も舌を絡めてみるのだけれどアポロ程上手く出来なくて少し悔しい。
『ぁ……ふ……』
苦しい。息が出来ない。
それでもこの唇だけは離したくない。
…離したくないけどこのまま本当に窒息死なんてことになれば元も子もない。
アポロは死にそうになってるシルヴィアに気付いて口を解放してやった。
卑しくも唇が離されても二人の唾液は繋がっていた。
『んはっ…はぁ…』
「満足か??」
『ん…取り敢えずは…』
「…毎回だけどさ、苦しくなったら云えよ??我慢することねぇんだから」
『ヤ、ヤだよ!!そんな簡単に離したくない…』
「そうか??…俺夢中になると中々気付かないからさ」
『…それだけ私に夢中になってくれてるんでしょう??』
「………まぁ」
『だから良いの。今の儘で』
…お互いどれだけ夢中になれてるか分かるしね
お願いだから私だけを視てなんて我儘かしら??
2008.06.14.
長い長い長い長い長い長い
たまにとてつもなく無意味に長くなります。
読みにくかったですよね。御免なさ〜い(泣)
最後まで読んで頂き有難う御座いました。