小説

□雨の日の子猫/猫と父親のお話、着衣なしおもらし・おもらし
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雨の日の帰り道。
僕は素敵な拾いものをした―


「…ふぅ」
僕は急遽休みになった先輩の代わりに本当は休みだったバイトに駆り出された帰りだった。
今日はお客は多いし、妙ないちゃもんを付けられるしでテンションはがた落ちだ。
気晴らしにどこかへ行く気も起きず、家へと向かう。
しとしとと降り続く雨は僕を余計に憂鬱にさせた。
ぼーっと歩いている時、何が視界を掠めた気がしてそちらへ目を向けた。


そこには、ぷるぷると震える捨て猫…もとい、人間がいた。
その捨て猫のような人は、全体に薄汚れたダボッとしたTシャツ一枚だけを着てずぶ濡れになっていた。
僕は新しい発見をしたようでワクワクしていた。
だけど気になるのは、のら猫のように痩せ細った躯だ。
満足に栄養を摂っているとは思えなかった。
雨に濡れたシャツから透ける躯に胸はない。どうやらオスのようだ。
一通り見物すると、彼へ歩み寄る。
そして、声を掛けた
「家においで」

彼はゆっくりと頭を上げたが、不思議そうな顔をするばかりで返事はない。
だがお構いなしに自分の上着を着せ、抱き上げる。
自分も汚れることは関係なかった。


数分歩き、自宅のアパートへ辿り着く。
鍵を開け、彼を玄関口に座らせ拭くものを持ってくる。

「身体、触るね。」
一言断ってから丁寧に拭いていく。
間近で見ると、肌も汚れている。外見は汚れて捨て猫のようなのに、どこか品のいい、高級な雰囲気を感じる。
拭き終わった後、部屋へと場所を移し熱などを測った。
移動するとき、相変わらず不思議そうに見てくるのでまた抱き抱えて連れてきた。

風邪など引いていないようなので風呂に入れる。

彼は一言も喋らないが、猫なので不思議ではない。
まず僕が服を脱いで見せる。
すると彼は服を脱ごうとする仕種を見せた。
ゆっくりだが、できるまで見守ることにする。
時間を掛けて、やっとシャツを脱いだ。

「えらいなー、よくやった」

頭を撫でてやると気持ち良さそうな表情をしたので、僕まで嬉しくなった。

風呂に入って隅々まで洗う。
彼の躯は痩せているのに幼児のようなやわらかな感触があった。

ついでに自分もシャワーを浴び、風呂を出る。

彼を部屋で待たせ2人分の服を探しに寝室へと向かう。
僕も体格はいい方ではないので、細身の服なら着られるだろう。

新品のパンツを探すのに手間取り、20分程して部屋に戻ると、彼は悲しそうな顔をしていた。
僕は「大丈夫だよ」と言ってから彼の表情の原因を片付ける。
彼はおもらしをしてしまっていた。
そう言えばトイレの場所をまだ教えていなかった。
だが、初めて来た家での失敗くらい可愛いものだろう。

掃除を終え、彼へと服を着せる。
まだグスグスと泣いていたので今回は彼にやらせずに手伝った。

身体を摩ったり頭を撫でたりして落ち着かせる。

暫く泣いて、元気を取り戻してきた。
「お腹空いた?」

彼はなんだか嬉しいそうな表情になる。
どうやらお腹が空いていたらしい。
台所へ行き、メニューを考える。
ちゃんとした食事はしていないだろうから、お腹に優しいものにしよう。


お粥にスープ、林檎という病人のような組み合わせにも関わらず、彼は目を輝かせてくれた。
体全身で喜びを表している。
だが食器に手を突っ込むというようなことはせず、じぃっとしている。
あまりに可愛いので、食べさせてやる。
スプーンを口へ持っていくとぱくっ!と勢いよく食べてくれる。

ご飯をあっと言う間に食べ終え、満足そうな顔を見せる。
なんだか僕はこの歳にして父親にでもなったかのような感覚を覚えていた。


食事を済ませた数分後、彼の表情が曇った。
慌てて食べてお腹でも痛くなったかと心配していると、ズボンの股間部分が濡れ始めた。
ふるふると身体を震わせながら、放尿の快感に目を細めている。

おもらしを終えくったりとした彼の着替えをさせ、後片付けをする。

「ふふ…」
本当に父親になったみたいだ。
世間の親の中には子どもの世話が苦痛に思う人もいるようだが、こんなに楽しいことはない。
思い掛けず父親になった僕は、とても幸せな気分だった。
 

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