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□君についた僕の
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「ま、たね 田島 くん!」

「おー!また明日なー!」



ぶんぶん!と勢い良く手を振る三橋 廉に田島 悠一郎も同じく手を振り返した。

部活を終えた夜の帰り道。
いつものように、部活疲れも何のその少しばかり寄り道をしていた2人も、ようやく帰路に着くようだ。
押して歩いていた自転車に跨がりとうに暮れた帰り道を走り出す三橋が、電灯に照らされる後ろ姿を、田島はぼんやりと眺める。



『好きだぞ!』



走り去る三橋の背中に思いっきり叫んでやった、心ん中で。
うん。心の中では、叫んだ。
思っただけ。口には出してない。



「うぉ!?」



口には出してなかった、筈。
なのに、思った瞬間、三橋が自転車に乗ったまま急に振り返るから思わず肩が跳ね上がってしまった。



「ば、ばいばい!」

「お、おぉ!」



きーこきーこ、とゆったり自転車を漕ぎながら再度手を振ってきた三橋に、田島も同じ動きを返す。



「あ!三橋!前まえっ!」

「う!? つお!」



目前に迫った電柱にぶつかりそうになって、三橋が慌ててブレーキ。
前を見ずに走るからだって!



「う、うひ」

「ふー…!」



三橋は冷や汗混じりに苦笑い、田島は全身で息を吐いた。


あっぶね!
三橋に怪我が無くて何より!
怪我でもさせてたら危うく俺が阿部に怒られる所だったかも!


三度目の別れの挨拶。
今度こそ真っ直ぐ前を見て走り出した三橋の後ろ姿を少しばかり見送ってから、田島も自転車に跨がった。
ゆっくりと漕ぎだす。



本当は言ってしまいたい気持ち、でも言えない気持ち。


だって、あっちもこっちも男だ。


こんなに情けなかったかと自分でも思うけど、俺だって考えるトコはあるわけ!
今回ばかりは本能のままに動く訳にはいかねぇの!


でも好きなんだ!ゲンミツに!




ここだけの話。


三橋と田島の2人が、最近帰るようになったこの道。

少しだけ遠回りしている。

田島が三橋に近道だと言って教えた道なのだけれど。
本当は、もっと早く帰れる道があったりするのです。


少しでも、長く。
少しでも傍に居たいから。


田島が三橋についた嘘。


いつか、好きだと言うから。
この帰り道を辿りながら。



だからそれまで、悪いとは思うけど宜しくな!なんて!



「うおっしゃー!」



下り坂。
びゅうびゅうと風を切る。
声を張り上げて、言葉にならない溢れる想いを表に出した。



君についた
僕の嘘




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