DUMP

□紅い雫
1ページ/4ページ

本日、体調不良の為、休ませて頂きます。”

誰が見ても綺麗と言える字で綴られた手紙を必死になって読み終え、

「やった、遊べる!」

と、飛び上がって喜んだユーリだが、執務室の扉を開いた途端、がっくりと肩を落とした。
正面の机で、フォンヴォルテール卿が書類の山を築いていたからだ。


+紅い雫+


紙を捲る音と、ペンを動かす音。
その音だけが、室内に繰り返し響いていた。
ユーリは、今日何度目かになる溜め息をついた。
王佐が休みの為、執務室にいるのはユーリとグウェンダルの2人だけ。
いつもなら手助けに来てくれるコンラートも、騒がしいけれど場の雰囲気を和ませてくれるヴォルフラムも、仕事で城を離れている。
逃げ道を失ったユーリを、緊迫した空気が包んでいる。
緊張の糸が切れる寸前、ユーリの目の前に立ち塞がっていた書類の山が一つ消えた。
再び溜め息をつくユーリ。
しかし、今のは安堵の溜め息である。

「グウェン、こっちのやつ終わったよー」
「では、こちらに持って来てくれ」

大量の書類を見てまた溜め息が出るが、肉体労働の方がまだマシ、と考えたユーリは少しずつ運び出した。

◆◇◆◇◆
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ