TROVADOR

□Memory loss
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「陛下ぁ〜〜〜!!」

狂った叫び声が、近づき遠のくのを聞いて、ユーリはホッと息をついた。
王佐から、逃げて来たところ。

「ったく、しつこいんだから」

本当なら、今は歴史の勉強の最中。
そこから逃げ出す理由は、大概が「勉強が嫌だから」である。
だが、今回だけは違う。
脳内を占める心配事が、彼に集中力を与えなかったのだ。
それへ尚しつこく教えてくるから、逃げた。

「コンラッドのトコ行こう」

ギュンターに見つかる事の無いようにと、静かに走り出す。
コンラートの部屋なら、匿ってもらえる上に、心を塞ぐこの不安を話し緩和し合う事が出来るだろうからと。
二人が・・・いや、『彼』を知る大半が現在抱えているのは、同じ心配であった。

「早く、目ぇ覚めないかな・・・」

走り、俯きながら、ぼそりと漏れる声。

早く目覚めて。
早く安心させて。

願いの強さに比例して、速くなる足。
通路の角を曲がった瞬間、ドンとぶつかってしまった。
尻餅をついた痛みに顔を歪めつつも、上を見ると。

「双、黒・・・!?」

見開かれた青い瞳と、驚愕の色を滲ませたハスキーボイス。

「ヨザック」
「何で、オレを知って・・・?」
「え・・・・・・?」

心配事の種が、ユーリの知らない姿で、そこに立っていた。

◆◇◆◇◆
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