TROVADOR

□Love me tender
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「あーら、どうしたの隊長?色っぽい溜め息なんかついちゃって」

他に誰もいなかったはずであったのに、コンラートは背後から抱きすくめられた。
顔を見るまでもなく、声を聴くまでもなく、薄いシャツ越しに伝わる温もりだけで、コンラートには相手が誰であるのかがわかった。

「ヨザック、気配を消して近づくな」
「しょうがねえじゃん。もう癖になっちゃってんだもん」
「だからって・・・・・・もういい」

説教を諦めたらしく、コンラートはヨザックの胸へと頭を預ける。
胴を抱いていた腕を左だけ外し、ヨザックはコンラートの髪に触れ、そのまま指を頬へと滑らせた。

「何を、歌ってたんだ?」

少し下にある茶色の髪に顔を摺り寄せながら訊ねると、銀の散る瞳が伏せられる。

「陛下の世界で聞いた歌を・・・」
「どーりで。世界各国を彷徨ってるオレでも聞いた事ない言葉なわけだ。・・・で?どんな意味の歌なんだ?」
「愛の歌だよ。ひたすら、愛を唄っている」

コンラートは、ヨザックに歌詞の意味を語った。
聞き終わった後、少し考える素振りを見せて、ヨザックが言う。

「なぁ、コンラッド。その歌、オレの為にもう一回歌って」

甘くねだると、仕方ないと言わんばかりの溜め息と共に、コンラートが口を開いた。
再び、澄んだ音色が空気を震わせる。
ヨザックは、優しく髪を撫でてやりながら、心地良い響きに聞き惚れていた。

「・・・どうだった?」
「もう・・・・・・最高・・・。コンラッド、すっげえ綺麗な声」
「俺は、お前の声も好きだぞ」
「そ?ありがと」

微笑の声と共に、コンラートの唇を指が撫ぜる。
少し武骨な、けれどコンラートに安らぎを与える事の出来る指。

「この声が、オレの為だけに喘いでくれるのかと思うと、嬉しい」
「馬鹿が・・・」
「バカで結構。・・・だって、コンラッドはそんなオレが好きなんだろ?」
「・・・まあな」
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