TROVADOR

□違えぬ誓いを君に捧ぐ
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「ん・・・・・・」

半目に開いた視界に映るのは、天井。
意識が浮上して、飛び上がるように身を起こしかけたところで、腰に激痛が走り、ベッドへUターンしてしまった。

「くうっ・・・。あ、れ?先輩??」

首をめぐらせて部屋を見るが、先輩の姿は見えない。
と、ドアが開いた。

「お、目ぇ覚ましたか」
「すんません。オレ、気絶しちゃったんスよね?」

めちゃくちゃ気持ちよくて、マジで壊れるかと思った。
そんなところで記憶が途切れているので、そういう事だろう。
案の定、先輩は苦笑すると、ベッドに腰掛けて頭を撫でてくれた。

「悪いな。無茶させた」
「んな事ないっス!・・・その・・・すげぇ、よかった、し・・・・・・」

顔に血液が集まって、耳まで熱くなる。

「すげー顔真っ赤だぞ」

笑われた。
恥ずかしくて、枕に顔を埋める。

「ありがとな、黄瀬」

笑い声の後、真剣な声でそう言われた。
顔をずらして、枕から片目を出すと、視線を向ける。
慈愛に満ちたその瞳に、心臓が高鳴った。

「なんか、少し楽になった。一人でいたら、今もまだ、もやもやしたもん胸に抱えてただろうから・・・。これで、また冬に向けて頑張れる。ありがとう、黄瀬」
「オレ、も」

起き上がろうともがくと、すぐに先輩は気付いて、手助けしてくれる。
腕を引かれて、そのまま先輩に抱きついた。

「オレだって、同じっス。先輩が来てくれなかったら、きっと一人で泣いてました。笠松さんがいてくれたから、今笑ってられるんです」
「黄瀬・・・。・・・冬は、勝つぞ」
「はいっス!次は青峰っちにも負けないし、先輩との連携だって、絶対成功させてみせます!!」

もう、あんな悔しい思いはしたくない。
させたくない。
今度こそ、勝ってやる。

「先輩」
「ん?」
「オレ、単純なんで、餌に簡単に釣られるんです」
「はぁ?」
「だから、オレの前に約束をぶら下げてて下さい。『WCで優勝したら、高校卒業後に同棲する』って!」

またコイツは馬鹿なこと言って、って顔された。
目を閉じて、溜め息一つ。
それから、真剣な目がオレを見る。

「勝て」

たった、一言。
けど、その一言が、深くオレの胸に突き刺さる。

「はい」

勝つ事も、生活を共にする事も、この人とだから意味がある。
幸せな気持ちになれる。

勝ってみせる。
必ず。
全ては、幾重にも重なる至福の為に。

「愛してます、先輩」

誓いの証は、唇の上で結ばれた。






【End】
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