TROVADOR

□違えぬ誓いを君に捧ぐ
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「アッ!あぁ・・・、ァ、んっ・・・!」

前戯までは、驚くほど穏やかだった。
浅いのも深いのも、いっぱいキスした。
お互いの熱を確かめ合うみたいに、いっぱい触った。
不思議なくらいに余裕だったのが崩れ始めたのは、笠松さんを受け入れる為の準備をしていた頃。
柔らかな快感がもどかしくて、早く一つになりたくて、「先輩」と声を出したのと、「黄瀬」と呼ばれるのが同時だった。
選手として、試合中は互いを意識する事が多いから、今日はきっとオレたち周波数が凄く一致してるんだ。
軽く笑ってから、一回キスして、先輩と繋がる。
そこからは、さっきまでの行為が嘘みたいに、二人でがむしゃらに抱き合った。

「せん、ぱ、ぁっぅ・・・っふ、あ、ア!」
「・・・黄瀬・・・・・・黄瀬・・・!」
「ぁ、ダメ、ダメ!また、イっ、ちゃぁ・・・!」
「イけよ。オレも、もうヤバ・・・」
「あっ!!やあぁ!・・・っ!!くあ、ぅ・・・・・・!」

強すぎる快感に、すぐ絶頂に追いやられる。
力んだ指の先に、引っかかる感触。

「つっ」

笠松さんの顔が顰められる。
ヤバい、背中、引っかいちゃった・・・。

「すんませ・・・っ」
「別に、大した事ない。気にすんな」
「あ、でも・・・」
「なら、これでいいだろ?」

一度抜かれ、ころんとひっくり返される。

「腰、上げろよ」
「はい・・・んっ」

うつ伏せの状態で腰を上げると、笠松さんの出したものが太ももを伝って、その感覚と羞恥に肌が粟立った。

「入れるぞ」
「はい、っス」

初めよりも滑りよく、先輩が入ってくる。
押し開かれる若干の苦しさと強烈な快楽に、枕をきつく抱き締めた。
びくびくと震える背中を、笠松さんの手が優しく撫でてくれた。
その暖かさに、体が少し緩む。

「大丈夫か?」
「へーきっス・・・」
「わりぃな。マジで、加減してやれねー」

余裕無いとか、そんな事を言いながら、触れてくる手つきや、体中に降らせてくるキスは、甘くて優しい。

「ね・・・、先輩」
「何だ?」

オレよりも凄く凄く大人な先輩は、いつだってこうして気遣ってくれる。
八つ当たりするなんて言ってたのに、その言葉どこに置いて来ちゃったんですか?
オレは、貴方の中に溜まってる吐き出せないもの全部、ぶつけて欲しいのに。

「もっと、激しくして・・・。優しくなくて、いいんです。いっぱい突いて、壊れちゃうくらい、気持ちいいの下さい」
「黄瀬・・・・・・」

ああ、考えてることバレてる。
そりゃそうか。
こんな風に誘った事なんて、今まで無いもんな。
でも、先輩のこと気遣ってるだけじゃないんですよ?
これはオレの本音。

「オレだって、忘れたいんです。今、この瞬間だけでも、全部忘れて、笠松さんの事だけ考えたい。だから、ね、先輩。もっとシて・・・」
「・・・馬鹿。明日、立てなくなってもしらねーぞ」

明日は部活も仕事も無い。
微笑んで頷いたら、とても気持ちいいキスをくれて、最後にもう一回馬鹿と呟かれた。



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